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 南が瀬名(木村拓哉)に「そんな無神経だから男に捨てられるんだよ」と言われてしまった夜、「私ってガサツ? 無神経?」とモモちゃんに尋ねると、「そんなことないです。私、あんまり上手く言えないけど……先輩のこと好きですよ」と優しい言葉を南に返していたシーンは特に印象的でした。

ほかにも「Over Time」(99年・フジテレビ系)のヒロイン・夏樹(江角マキコ)と、親友の春子(西田尚美)と冬美(石田ゆり子)の友情も観ていて楽しいものでした。

恋という言葉に収まらないラブストーリーもある

©文藝春秋

 ひょんなことから一緒に暮らすことになった、大学生の入江(筒井道隆)、親戚の娘・朝美(瀬戸朝香)、入江の後輩・杉矢(いしだ壱成)の3人が織り成すラブストーリー「君といた夏」(94年・フジテレビ系)も取り上げてみます。

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 こちらの作品も恋愛ドラマという枠組みを踏襲してはいるものの、3人の間には「恋愛」という言葉では説明がつかない関係性がしっかり出来上がっているように見えるのです。印象的なのは3人で海を訪れた際に朝美が言う「ねぇ、恋より楽しくない? 私たち、恋より楽しくない?」というセリフ。

 最終回のサブタイトルは「恋よりも大切なもの」となっていましたが、実はこれが北川脚本の真骨頂のような気がしています。恋愛至上主義の90年代のドラマにおいてしっかり「恋」でなくてもいい、心の近くにいる大切な存在を描いているんですから。恋愛の神様とマスコミから謳われてしまっているけど、本当に描きたいのは、きっと「恋」という言葉だけに収まらない、個別の友愛関係なのではないでしょうか。

 実際「ロングバケーション」「Over Time」も、同性だけでなく、異性間の友情が物語のひとつのテーマになっています。

「ラブストーリー」はドラマの王道ジャンルとして目立った存在です。でもその「ラブ」はなにも男女の恋愛に限ったものではりません。人と人が築く、親しくも名もない関係性のひとつひとつが「ラブ」であることを私達は忘れてはいけない気がします。