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東京地検が描いた筋書き

 小沢事務所による「天の声」に怯え、建設業者たちはせっせとゼネコンマネーを貢いできた。表と裏という違いこそあれ、いずれの献金も動機は同じ性質だ。有体にいえば、献金は小沢一郎および小沢事務所の秘書の力が大きな影を落とす、公共工事の受注工作である。東京地検特捜部は、そんな事件の全体像をイメージし、捜査を続けてきたといえる。その捜査の範囲は、政治家や議員事務所だけではない。

 公共工事では、政官界だけではなく、建設業界内での調整もある。巷間言われるところの談合だ。

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 工事別の受注や下請けの手配など、事業における具体的な指図は、談合組織の仕切り役が差配する決まりになってきた。仕切り役は、天皇、ドン、ボスなどと呼ばれるが、東北における談合の仕切り役が、鹿島建設の東北支店である。歴代の副支店長や支店次長が、談合を牛耳ってきた。鹿島建設東北支店と小沢事務所の両輪が、東北談合組織の頂点に君臨し、公共工事をゆがめてきた─―。それが東京地検の描いた筋書きである。その見方は的外れではない。

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小沢一郎との出会い

「西松建設は必ずしも小沢事務所との関係が良好ではなく、公共工事を思うように受注できなかった」

 西松建設社長らの初公判で、公判検事は西松建設が犯行に手を染めた業界事情について、そう分析してみせた。もっとも、この説明では、事件の因果関係を語り尽くせない。東北談合組織の歴史的な背景について、中堅ゼネコンの元東北支店長が解説してくれた。

「談合は、地方ごとに仕切り役が違うケースが少なくありませんが、全国的な影響力を持ってきた業界の天皇もいます。たとえばゼネコン汚職事件前だと、東の植良、西の平島という両巨頭がいました。飛島建設会長だった植良祐政さんと西松建設元相談役の平島栄さんです。とりわけ中央談合組織を築いた飛島建設の植良さんの力は絶大で、その影響が東北にまでおよんでいました」

 従来、談合組織は5社あるスーパーゼネコンの幹部が仕切る傾向があったが、飛島建設の植良と西松建設の平島だけは別格だった。

 ゼネコン業界にとって、政界における絶対的な権力者が田中角栄だったのは知られたところだ。田中はいわゆる建設族議員のドンであり、中央の大型公共工事の受注額の3パーセントを政治献金する「3パーセントルール」を確立したとされる。ゼネコンの談合担当者は、みな田中の顔色をうかがい、目白の田中邸に日参した。田中は、鹿島建設副社長だった前田忠次を業界の窓口として指名し、前田が業界ににらみを利かせてきた。