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「悪徳腐敗官僚より売春婦のほうがまし」 貧困からの脱出を阻む中国の戸籍制度のリアル

『中国人「毒婦」の告白』#32

2021/02/25
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「お見合いの時は、純情な田舎娘に見えた女性が、来日数日後には姿を消し、地方の風俗などで働いて1、2年後には中国の元恋人を日本に呼び寄せるなどというケースもけして少なくないのです」(前出・元斡旋業者)

 日中間のお見合い結婚で、愛を育むということは、もしかしたら、河原の石の中から、宝石を探すような作業なのかもしれない。仮に宝石を探し当てたと思っても、金銭面でのトラブルが発生する場合もあるという。

仲介料を要求されるトラブルも

「日本側の男性は、結婚が成立したら300万円なり400万円(お見合いのツアー料金を含む)を支払うことになっていますが、その中には、結納金の30~40万円(これは実家に支払う)と来日のための交通費が入っています。ところが、来日したら、そんな金は実家に一切支払われてなくて、逆に100~150万円もの仲介料を中国側仲介業者に要求され、なんとかしてくれと、夫に泣きつく花嫁もいます。夫側にすれば国際お見合い結婚といったところで、実態は売買婚ですからそんな金は一切出せないということになります。

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 こうしたトラブルは、信用にかかわりますから、日本側業者も、それなりに注意はするのですが、中国人は口がうまいですから、なかなか見抜けませんし、もともと契約を守るという概念も薄いのです。しかし、彼らに頼まなければ現地で若い女性を調達するなどということは事実上不可能ですから、どうすることもできません」(前出・元斡旋業者)

大事なのは愛情ではなく豊かさ

 詩織の場合は一体、どのケースだったのだろうか。成田空港に降り立つも、結婚相手の顔すら良く分からなかったぐらいだから、貧しく牢乎(ろうこ)とした中国農村からの脱出が最大の目的であった、と考えて、まず間違いあるまい。

 ここで日中の国際結婚を題材にした小説『ワンちゃん』を書き、自らも日本人と結婚した経歴のある芥川賞作家の楊逸さんに日中間の国際結婚の本質、詩織の結婚と犯罪についてどう思うかを聞いてみた。 

中国人「毒婦」の告白

田村 建雄

文藝春秋

2011年4月20日 発売

「悪徳腐敗官僚より売春婦のほうがまし」 貧困からの脱出を阻む中国の戸籍制度のリアル

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