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泣き出しそうな真っ赤な顔で放った言葉

 裁判長がそう声を挟んだ時には、もはや横山は興奮し切っていて、鼻息も荒く、肩で息をしながら、いまにも泣き出しそうに顔は真っ赤だった。

「人の気持ちを、弄ぶようなことして……!」

 弁護人が被告人の前にまわって、しゃがみ込むようにして横山の顔を覗き込んだ。そして何かを囁くように声をかけたが、横山はたった一言だけ吐き捨てただけだった。

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「もう、黙ってます!」

 以来、横山は自分の法廷でも何も語らなくなっていった。

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 もはや被告人質問にも答えなかった。

 ただひたすら黙ってしまった。

 拗ねて、投げやりになってしまった──そうとしか、思えなかった。

 結局、横山の裁判に臨む姿勢は、他の実行犯とは程遠いものだった。

 他人の法廷はもとより、自身の裁判ですら、事案の究明に積極的ではなかった。

 反省、悔悟の念も明らかになるものではなかった。

 忌憚のないところを言ってしまえば、他の誰よりも幼稚で甘えん坊だった。

 しかし、反省や悔悟といったところで、いったい何を思えばいいのだろうか。

 自分が殺した人の名前や顔を想像しようにも、そんな対象がなかった。

 林郁夫でさえ、自白を決意する時には、自分が殺した2人のことを思った、と言った。

 林郁夫は、地下鉄サリン事件の自供に至ったきっかけに、拘置所での自殺を考えたことをあげた。その時のことを、法廷でこう語っている。(1997年12月10日被告人質問より)

「そのときは、自分が信念として行動してきたオウムは正しい、そう信じてきた。信念で行動してきたことを伝えたくなったんです。