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多くの実力派が演じた渋沢栄一という役柄

 渋沢が主人公で、その青年時代を中心に描き、『青天を衝け』と登場人物も重なるのが、TBSで1978年9月に放送された単発ドラマ『雲を翔びこせ』である(現在、Paraviで配信中)。主演の西田敏行(当時30歳)はちょうどこの年、ドラマ『西遊記』で猪八戒を演じて人気を集めた。風貌といい体型といい、西田は写真に残る渋沢となかなか似ている。

西田敏行は『雲を翔びこせ』で渋沢役を演じた ©文藝春秋

『雲を翔びこせ』は東宝出身の広沢栄による脚本で、演出を先日亡くなったTBSの名ディレクター・鴨下信一が手がけた。物語は、渋沢とそのいとこの渋沢喜作を軸に展開する。幕末に青年時代をすごした2人はともに尊皇攘夷運動に参加するが、やがて一橋家の家臣・平岡円四郎(田村高廣)に取り立てられ、徳川慶喜(片岡孝夫=現・仁左衛門)に仕えるようになったあたりから溝が生じ始める。

いとこの喜作役を演じたのは武田鉄矢

 渋沢は将軍となった慶喜の命を受け、1867年のパリ万国博覧会に出展する幕府使節団の一員として渡欧、各地を視察してまわった。明治維新のあと帰国すると、新政府に仕官する。順調に出世する渋沢とは反対に、喜作には過酷な運命が待っていた。終盤、渋沢と再会を果たす喜作の姿には驚かされる。

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武田鉄矢 ©文藝春秋

 この喜作を武田鉄矢(当時29歳)が演じた。時期をほぼ同じくして名前が売れ出し、プライベートでも親しいという武田と西田がぶつかり合う様子は見ものである。『雲を翔びこせ』ではこのほか、やはり渋沢のいとこで一緒に攘夷運動に身を投じる尾高長七郎を、異色の配役でミュージシャンのChar(当時23歳)が熱演した。なお、『青天を衝け』では喜作を高良健吾、長七郎を満島真之介が演じる。吉沢亮と西田もそうだが、高良と武田もまったくイメージが違うのが面白い。