2020年、突如世界を襲った新型コロナウイルス。その影響はあらゆる分野へと波及した。スポーツ界も例に漏れず、各団体は未知なるウイルスへの対応が迫られ続けた1年だったといえる。問題はいまだ解決に至っておらず、ほとんどすべてのスポーツで入場制限が行われている状況だ。これからスポーツビジネスはどのような変化を求められ、社会の中でどのような立ち位置を担っていくことになるのだろうか。
ここでは、さまざまなスポーツ団体の運営に携わり、現在は日本ハンドボール協会の代表理事を務める葦原一正氏による著書『日本のスポーツビジネスが世界に通用しない本当の理由』(光文社)を引用。ウィズ・コロナ、アフター・コロナの時代における、日本、そして世界のスポーツビジネスの現状・展望を考える。(全2回の2回目/前編を読む)
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シーズン佳境での決断
突如として出現した未知なる強敵に、スポーツはどうやって立ち向かうべきなのか。
2020年2月26日、Bリーグは2日後の28日から3月11日にかけて開催を予定していたB1リーグ戦、B2リーグ戦の開催延期を発表した。計99試合が対象だった。新型コロナウイルス感染拡大への対策だった。
Bリーグが延期を発表する2日前、Jリーグが3月15日までの試合延期を明らかにしている。新型コロナウイルスの感染対策に関する国の専門家委員会が、「今後1~2週間が瀬戸際」との見解を示したからだった。
3月9日にはJリーグとNPBによる「新型コロナウイルス対策連絡会議」が立ち上げられ、NPBはその日の午後に3月20日開幕予定のプロ野球開幕を延期すると発表した。
JリーグとNPBが協調したことは、広く支持を得た。とくにJリーグの素早い判断は、その後のスポーツ界の指針となっていった。
この時点でのスポーツイベントの開催については、2つの判断があった。
延期か、無観客で開催するのか、である。
JリーグはJ1、J2が開幕節を終えたばかりで、J3はまだスタートしていなかった。延期となればスケジュールを組み直したり、販売済みのチケットの扱いを検討したりと、事務的な作業に追われる。ただ、新しいシーズンは動き出したばかりで、スケジュールにはまだ余裕がある。そのぶんだけ、延期という判断を下しやすかった。
NPBは開幕前だった。2020年シーズンのカレンダーは1枚もめくられていないから、こちらも延期したうえで対策を練る時間を持つことができていた。
それに対してBリーグは、シーズンの佳境に差しかかっていた。
延期に伴う最重要課題は、アリーナの確保だった。市民体育館などは文字どおり市民のための公共施設だ。平日の夜にママさんバレーを楽しむみなさんに、「Bリーグが延期になったので使わせてください」とは言えない。延期したらなかなか試合会場を見つけられない、というクラブが出てくるのは必至だった。
全クラブがすぐにアリーナの再確保を見通せない以上、レギュラーシーズンの残り試合を消化し、B1の優勝を決めるチャンピオンシップ、B1・B2入れ替え戦などのポストシーズンの試合を終えるという選択肢を、簡単にあきらめることはできなかった。
そこで、3月14日以降の試合を、無観客で実施することにした。