しかし、14日に予定されていたB1の川崎ブレイブサンダースとレバンガ北海道の試合が、直前で中止された。北海道の3選手に発熱が見られたためだった。
翌15日もB1の1試合が中止となった。会場到着時に定めている検温で、審判員の1人から37・5度の発熱が確認されたからだった。
残り試合とポストシーズンの中止を段階的に決定
翌16日からBリーグ、選手会、各クラブで改めて議論を進めた。プレーする選手、観戦に訪れるファンの安心・安全、さらには世間の感染対策との足並みを考えると、延期でも無観客でもない決断をするしかなかった。Bリーグはレギュラーシーズンの残り試合とポストシーズンの中止を、段階的に決定していった。この当時、私は基本的にリーグではなく協会の仕事をしていたのですべての流れを把握していたわけではないが、協会から見ていても概ね致しかたない流れととらえていた。
アメリカのMLSは、再開後のリーグ戦をフロリダ州で集中開催した。全26チームを一ヵ所に集め、移動を減らすことで感染リスクを抑えた。
2019年のラグビーワールドカップで、台風による試合の中断があった。大会組織委員会は中止になったチケット代を払い戻ししたが、その支えとなったのが興行中止保険だった。
Bリーグも同種の保険には加入しているが、適用範囲は自然災害などによる中止だ。新型コロナウイルスの感染拡大は、保険の適応範囲に含まれていない。中止によってリーグもクラブも大きな痛手を負うことになったが、選手は心理的不安を抱えているだろうし、それではいつものプレーはできない。プロスポーツの興行たる要件を、満たせないことになる。
分断と結束
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ意味で、中止という選択肢は許容されるものだったと思う。自分が感染しない、周りの人を感染させない、という姿勢は、貫かれていくべきものだ。
正直に明かせば、私自身は当初「プロスポーツの興行はできる限りやったほうがいい」という意見にも揺さぶられた。自分たちが感染しない、周りの人を感染させない、という基本姿勢を否定するつもりはないが、「スポーツを観たい」という人はいたと思う。4月に入って緊急事態宣言が発令され、自粛ムードが一気に高まっていくと、「こんな時だからこそ、スポーツがあったらな」という声を聞くようになった。できる限りの感染防止対策を講じたうえで興行をしていくのも、スポーツに課せられた役割の1つではないだろうか、といった自問自答は続いた。