そんなことを考えていた時に、Jリーグの村井満チェアマンをテレビで観た。Jリーグは6月27日にJ2、J3を無観客でスタートさせ、それを受けて29日にニュース番組に出演していた。
村井チェアマンは「新型コロナウイルスは分断を仕掛けてくる存在ととらえていた。相手が分断を仕掛けてくるのなら、徹底的に結束しようという考えで臨んだ」と話した。
実に的確な表現だと感じた。
「スポーツ」はこれからどうなっていくのか
スポーツの起源を紐解くと、生活のための狩猟からはじまり、身体訓練や軍事訓練の意味合いを経てゲーム性が加味されていったと言われている。そこからエンターテインメントの1つとして発展していったが、1984年のロサンゼルスオリンピック以降はビジネスとしての価値を生み出すものととらえられてきた。
ウィズ・コロナ、アフター・コロナの時代の、スポーツの位置づけとは?
私は、社会をつなぐもの、と考える。社会連携のための極めて重要なツールとしてだ。
自分の生活圏でスポーツを楽しむ、スポーツで身体を鍛える、といった世界観から、今後は社会をつなぎ合わせていくツールとしての価値を増大させていくと思う。
不特定多数の人が集まる懇親会などで、初対面の人にどんどん話しかける日本人がどれぐらいいるだろうか。外国人に比べると少ないというのが、多くの人にとっての実感に違いない。「中締め」という習慣も、途中で退席したい人への配慮から生まれたものだ。
人と人とをつなぐツール
ところが、ボールが1つあると異なる現象が起こる。まったくの初対面でも、言葉が通じなくても、パスを交換すれば笑顔が広がる。身振り手振りを使って、コミュニケーションをはかるようにもなる。
観戦しているファンも同じだ。隣に座っている人が同じチームを応援していたら、誰だって悪い気はしないものだ。「きっかけさえあれば話してもいいな」と思っているはずで、試合が始まって応援に熱がこもってくると、シュートが決まった瞬間にハイタッチをしたりする。だから私は、データをうまく活用して属性の同じファンを近くに座らせたいと考えたのだ。
人と人をつなぐツールとして、スポーツが持つポテンシャルは我々が考える以上に大きい。人と人がつながることでスタジアムやアリーナに一体感が広がり、もっと言えば世の中が豊かになっていく。