JR東日本が調査検討したところ、トンネル建設費用は約1500億円という見積もりになり、所要時間短縮効果は約10分となった。こちらも主な狙いは時間短縮ではなく、降雪や豪雨などによる運休と遅延だ。山形新幹線は年間平均で270本が運休または遅延しており、最高記録は410本。その4割が福島~米沢間の板谷峠区間に集中している。
このトンネルについては、山形県がもうひとつの野心を覗かせている。フル規格新幹線による「奥羽新幹線」だ。山形県にとって現在のミニ新幹線方式の「つばさ」は暫定的で、本命はフル規格新幹線だ。いつになるかわからないけれども、将来、フル規格で新幹線を作るなら、このトンネルを始めからフル規格新幹線のサイズで作った方がいい。JR東日本はこの要望に添う形でも調査しており、トンネル建設費用は約1620億円。当初計画より約120億円の増額になるという。
「つばさ」は駅改良、新車導入も
「つばさ」関連では、JR東日本が福島駅改良工事と新型車両「E8系」の導入を発表している。
福島駅改良工事は「つばさ」と「やまびこ」を連結、分割できる線路を増やす。現在の福島駅は新幹線プラットホーム2面、線路4本だ。現在はもっとも西側の下り線路だけが分割と併結を実施できる。これは奥羽本線との連絡線がもっとも西側の線路しかつながっていないから。
上り列車の連結を実施する場合、仙台方面から来た「やまびこ」が下り線を塞いで進入するため、ダイヤが乱れると東北新幹線全体に波及する。そこで、奥羽本線の線路を増設して、上り線でも併結できるようにする。
新型車両「E8系」は山形新幹線専用車両だ。現在の車両は、かつて秋田新幹線でも使われていたE3系。つまり「こまち」と「つばさ」は同じ規格の電車でもいい。しかし、E6系の山形新幹線バージョンではなく、専用設計とした。E6系とE8系のデザイン以外の大きな違いは最高速度だ。E6系の時速320kmより低く時速300km対応となっている。東北新幹線区間は福島までだし、連結相手は停車駅の多い「やまびこ」だから、時速320kmまでの性能は不要という考え方だろうか。
峠を通過するトンネルについては、「こまち」「つばさ」ともに建設費の負担割合と財源問題の解決次第だ。しかし、それ以外の高速化の取り組みは着実に進んでいる。