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 競争って自分の順番がどこにあるのかが大事になってしまう。いろんな場面でなにかとマウントの取り合いをする人たちがいますが、それって順位に縛られているゆえの行動だと思うんです。

 ダイエットは、他者よりも上にいるとか下にいるといった順位なんて関係ない。自分のなかでの目標を目指すことで満足の尺度が変わっていくものなんだと、気付いたんですよ。そうしたら、他者にはその人なりの目標、思想、尺度があるんだと悟って、他者に対して寛容になれました。

©山元茂樹/文藝春秋

 わかりやすく言うと、「自分は自分で頑張ってる。あなたはあなたで頑張ってる。だから、お互い応援するし、合わないところは別々のままでいいよね」という感じです。

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クイズ作家として変化したこと

――そうなってくると、クイズ作家として作り出すものも変わっていきそうですね。

古川 クイズというのは、「自分と他人を分けて考える」という考え方とは真逆の構図を持った文化だと思っています。

 自分が面白いと思って出題しても、誰も答えてくれないと成立しないわけです。クイズ番組でも、視聴者もいるわけなので、出題者と解答者だけで盛り上がっても駄目。視聴者はわかっていても、解答者が正解できなければ駄目だし。世間がどう見ているのか客観的な視点が大事になる文化で、それを意のままにコントロールできる、というのが僕らクイズ作家の理想なんです。

©山元茂樹/文藝春秋

 だから、自分だけが満足できればいいなんて許されない。他の仕事も同じでしょうが、クイズは特にそういう色が濃い。それを踏まえてなにが変わったかと言うならば、自分が納得しているものの中で、みんなにも届くものはなにかを考えるようになったことかな。

 なにか流行らせられないかとか、お金になるものを生み出せられないかと考えて作ったクイズと、「僕はこれが面白いと思うけど、みんなにわかってもらえるかな。こうしたらわかるかな、伝わるかな」と思って作ったものって、なにかしら違うと思うんです。出題者の生き生きしている度合いが透けて見えて、違う成果物になっているんじゃないかなというか。

 いま僕が仕事で作っている問題や企画は、絶対にこれまでよりも面白くなっていると自分では感じています。これもダイエットを通して自他の区別がつくようになったからでしょうね。