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安全保障に理解のある政治家は誰?

――かつてが悪かったというのは、文官統制と言われたときのことを指していらっしゃるのでしょうか。つまり、内局(防衛官僚)が制服組を押さえつけるという。

折木 それ以前の問題で、やはり政治家が自衛隊と真剣に向き合ってこなかったということだと思っています。かつては経済を優先していて、自衛隊を運用する必要もなかったという話かもしれませんが、今は運用する時代になったわけですから、自衛隊の中身のことも、安全保障環境のことも知っておかなくてはいけないはずです。NSCができて、岩崎君(岩崎茂元統合幕僚長)、河野君(河野克俊前統合幕僚長)と続いて……特に河野君は、NSCの会議や、普段の報告の場を通して、安倍さんと同じ言葉で話せていた。そういう関係が、理想の姿だと思いますね。

――安倍さん以外にも、今の政治家の中でこの人は自衛隊や安全保障のことをよくわかっているな、と思われる方はいますか。

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折木 私が補佐官として仕えたからではありませんが、やはり小野寺五典さんはよくご存知だと思いますし、もちろん森本敏さんもそうだと思いますね。

小野寺五典氏 ©JMPA

――もっと若い方ではどうでしょうか。

折木 色んな人がいますけど、まだポンと出てこないです。逆に言えば、若い人にこそ、安全保障や外交の観点で、もっと深い関心を持って育っていっていただきたいなと思います。防衛大学校出身の佐藤(正久)議員や宇都(隆史)議員は、また別として。

ある連隊長の“不祥事”

――折木さんは幕僚監部で仕事をされていたこともありますが、内局との関係はいかがでしたか。

折木 先ほどの文官統制の話で言えば、たまに横柄な文官はいますけど、我々の時代になってからはだんだん、そうした壁は取り払われてきています。今はむしろ互いに連携していくという認識になっているはずです。特に、自衛隊が運用される時代に変わってからは、一緒にやらないと、彼らだって困るんですね。例えば、2015年には内局の運用企画局が統合幕僚監部に統合されて、オペレーション機能が一体化しました。あれは、昔では考えられないことですが、そういう面でも内幕一体化は進んでいると思います。

――一方で、政軍関係が変わることに懸念を示す人もいますよね。たとえば、これは北澤さんが本の中で書かれていますけども、2010年に陸自と米陸軍の合同訓練の中で、ある連隊長が「同盟というものは外交や政治的な美辞麗句だけで維持されるものではなく、ましてや信頼してくれなどという言葉だけで維持されるものではない」と発言して、処分されました。これは当時総理大臣だった鳩山由紀夫さんの「トラスト・ミー」に対する皮肉のような発言だったと思いますが、こうした“不祥事”が出てくることについてはどうご覧になっていますか。

 

折木 それは、どういう言葉にするかという問題で、本当の思いの部分は私と一緒だと思うんですよ。要は、本来の意味での政軍関係が必要であり、その上で我々はしっかりと働きますよ、という。確かに表現の仕方とか、その立場で言うのかよとか、そうした問題はあって、不祥事と言えば不祥事なんですが、極端に、たとえば主義思想が右だとか左だとか、そういう話ではないと思います。だから、それをもってして自衛隊の根本に極端な考え方が流れているとか、そうした捉え方をされるのは違うのかな、と。当たり前ですが、自衛隊は政治に対する従順性が限りなく高いと思います。

――ただ、これはあえてお聞きしますが、どうしても軍の暴走を心配する人というのは出てきますよね。そういう人たちに対して、「そんなことはないんです」と安心させる言葉があるとすると、それはどんなものになりますか。