折木 それは、考え方というのはみんな、やっぱり幅があると思うんです。これは勉強すればするほど、田母神さんの方にいくか、そうじゃない方にいくか、どっちかだと思います。だから、その考え方自体がどうだ、ということはなくて、田母神さんは田母神さんで色々と蓄積してきた中で、ああいう考え方になってきたわけで。ただ、たとえばあのようなものが自衛隊のほとんどの考え方だとか、そういうことも全くないわけです。それは個人個人の主義主張だと思っていますね。
メディア対応で気をつけていた“2つのこと”
――次に、メディアの話も伺いたいです。折木さんは、新聞はどちらをとられていますか?
折木 私は基本、読売です。その他に、ちょっと気になったりすると日経を見たりしますね。
――雑誌では、いつも読まれているものはありますか。
折木 新聞の特集などを読んでいて、例えば『Voice』にこんなことを書いている人がいるのか、と思ったら手帳にメモして、それを読んだりはしますね。あとは知り合いの人が書いていたり、興味のあるテーマがあれば。定期購読しているものはないですが。
――陸幕長や統幕長の頃は、毎週記者会見をやらなければいけないということで、メディアとの付き合いもあったと思います。そうした中で、印象深かったことや、気をつけていたことはありますでしょうか。
折木 基本的には、メディアの方と接触するのは、幕長になるぐらいまではそんなにないんですよね。だから、陸幕長になる前に1回だけ、記者会見の予行というか、練習をやらせてもらいました。博報堂か、電通だったかな、そこの人にも来てもらって。ヘリ事故があったという設定で、記者会見をやるんです。そこで厳しい質問が来たり、足を組むんじゃないとか、ご指導をいただいたりして(笑)。
あとは、幕長になってから気をつけていたのは、自分の言葉で話すことですね。だから私は、ほとんどペーパーを持たずに記者会見に行って、自分の言葉でやりとりさせてもらったんです。それと、わからないものはわからない、知らないものは知らないと言う……つまり、嘘を言わないということですね。
どんな本を読んでいますか?
――退官後には、橋爪大三郎さんとの対談本(『日本人のための軍事学』)も出されていますが、他にも今の日本の言論状況をご覧になっていて、この人の考え方はしっかりしているな、安全保障に理解があるな、という方はいらっしゃいますか。
折木 そうですね……。安全保障というよりも、ものの考え方として、宗教学者の折口信夫さんが書かれる文章はものすごく面白くて。心の収め方とかリーダーシップとか、そういう面で参考にしていますね。
――あまり最近の本は読まれないですか。
折木 いえ、読むのは今どきの本が多いです。竹森俊平さんの『WEAK LINK』とか、あとはハラリの『21 Lessons』とか、面白かったですね。でもダメですね、歳を取ると。読んでもすぐに忘れちゃって(笑)。
――会田雄次さんの『日本人の意識構造』や、高坂正堯さんの『国際政治』なども、著書の中で挙げられていましたね。
折木 どちらも若い頃に読んだものですね。高坂さんは、私が20代、30代のときには、国際政治に関しては一番インパクトのある方でした。高坂さんの考えの一部が、今も私の頭の中にあるという気がします。