自衛隊の道に進もうとは考えていなかった
――折木さんはご出身が熊本ですよね。八代高校で、先生が陸軍出身の方だったり、自衛隊に入った先輩がたまたま学校に来られたりして、その影響で防大に進学されたということですが、それまではあまり自衛隊の道に進もうとは考えていなかったんでしょうか。
折木 そうですね。熊本の田舎の方でしたし、身近に自衛隊の存在があったわけでもなかったので。
――最初から「自衛隊しかない」と真面目一徹にいくと逆に挫折する、むしろなんとなく進学した人のほうが続くんだ……といった話を、自衛隊関係の人からよく聞きます。そうした傾向は実際にあるものでしょうか。
折木 私もそう思いますね。いつも冗談で、「ゴリゴリに国を守るんだとか、自衛官になるんだと思っていたんでしょ?」と聞かれたりするんですけど、全然そんなことはなくて(笑)。でも、その方がかえって良かったと思います。
逆に、ものすごく大きな期待を持っていたり、自分の中での自衛隊像を膨らませてから中に入ると、やっぱり現実とのギャップに直面するんですよね。そこでうまく合わせられる人もいるんですが、18歳以前の若い人が、あまりに「俺は国を守るんだ」などと思い込んでしまうと、そのギャップに悩んで辞めていくことはあると思います。
「しなやかで、たくましい自衛隊」
――では、最後の質問なのですが、本の中で自衛隊のキャッチフレーズは時代ごとに変化している、と書かれていますよね。「愛される自衛隊」「信頼される自衛隊」「親しまれる自衛隊」など……。そこで、もし今後の自衛隊にキャッチフレーズをつけるとしたら、何になるでしょうか。
折木 いやぁ、難しいですね。こんな質問は初めて受けたなぁ(笑)。……うーん、自分のフレーズで言うと、「しなやかで、たくましい自衛隊」というのは時々使っていまして。「しなやか」というのは、やっぱり組織として柔軟性を持たないといけないという部分があって。それはふらつくという意味ではなくて、竹と一緒で、風に吹かれても折れることなく、柔らかく立ち続ける、それは自分に芯があるからできることだと思うんです。自衛隊には、そういう組織になってもらいたいなと。
一方の「たくましい」というのは、自衛隊にはどんな状況にも耐えなきゃいけない部分があるということです。災害派遣も、軍事的な動きも、たとえ人数が少なかったとしても、いざとなれば色んなことをやらなければいけない。だから、ある程度何でもやれる組織を作っておかなくてはいけない、という意味合いで、「たくましさ」が必要だと思っています。
――ずっとお話を伺っていますと、折木さんご自身が、安全保障についてはしっかりと芯になる考えをお持ちで、その上でどんな質問にもバランスを取りながら答えられていて、まさしく「しなやかで、たくましい」という姿を実践されているのではないかと感じました。
折木 いや、私はかなり、くにゃくにゃのしなやかさだと思いますよ(笑)。
撮影=平松市聖/文藝春秋