半グレになる過程はヤクザになる過程に近い
筆者が取材した半グレのケースを見ると、暴力団加入に至るプロセスによく似ています。特に少年が非行に走ったのち、非行集団に入るまでは同じです。
違う点は、繰り返しになりますが、非行集団から半グレという犯罪集団加入へのハードルがとても低いことです。「盃がないからスタートラインに立ちやすい」のです。
暴力団では、親分の盃を貰うまでの間、数年の部屋住み修行が欠かせません。この修行期間を現代の若者は忌避する傾向があります。
筆者が就労支援で担当した少年も、「希望する仕事」の欄に、「修行的なものとかない仕事」などと書く者がいました。こうした若者の傾向は、何も非行少年ばかりではなく、一般の職業社会でも見られることです。たとえば昨今、日本料理職人の後継者が育たないという声を聞きますが、一人前の板前になるためには、追い廻し(雑用全般)から始めて揚げ場、焼き方等のプロセスを経て、10年ほどの修業の後にようやく脇板、板前となります。職業社会でも一人前になるためには、一定のトレーニング期間が不可欠なのです。
半グレには、そのようなトレーニング期間はありません。街角の仲間とツルんで不良をしていただけの集団が、メンバーの加齢とともに犯罪集団に変質していきます。
このことは、犯罪学的な通説、すなわち、加齢とともに非行化傾向は減衰し、真面目な大人になってゆくとされる現象(筆者の世代に存在した暴走族の「卒業」のようなイメージ)に変化が生じていることを表しています。
“卒業”のない半グレたち
半グレは、そのような卒業のタイミングがありません。就職、結婚といったタイミングで抜けるということも一般的ではないのです。
軽い感じで、地元の友人たちとツルんでいるうちに半グレ化し、そのまま特殊詐欺に代表される犯罪にチームで手を染めます。この半グレの実態解明のためには、早急に様々なサンプルを収集し、研究していく必要があります。半グレや半グレから利用された若者を更生させるためには、半グレという社会集団の実態解明が待たれます。
【前編を読む】「小5の妹を孕ませた内縁の父に殺意を持って…」私はこうして“暴力団員”になりました