「新型コロナウイルスワクチンの接種も始まりました。今しばらく、国民の皆さんが痛みを分かち合い、協力し合いながら、コロナ禍を忍耐強く乗り越える先に、明るい将来が開けることを心待ちにしております」
今年2月の誕生日会見で、力強くおっしゃった天皇陛下。「安全運転型」(天皇陛下の高校時代の同級生)と評され、いつも一定の落ち着いたトーンで話す陛下だが、今回の会見では「明るい将来が開けることを心待ちに」など、気持ちのこもった発言が今までよりも目立った。宮内庁担当記者の間でも、「珍しく見出しがとりやすい会見だった」という感想が広がった。
また、3月11日に国立劇場で行われた東日本大震災十周年追悼式でも、陛下は「私も、皇后とともに、今後とも被災地の方々の声に耳を傾け、心を寄せ続けていきたいと思います」と述べられた。
しかし一方で、外出を伴う公務が難しい現状に、「両陛下は歯がゆい思いをされている様子だ」と嘆息する侍従職関係者もいる。
「2011年3月11日に起こった東日本大震災は、両陛下にとっても特別な思いを抱く日です。当時、雅子さまは体調が芳しくない時期もありました。それでも、被災地のお見舞いに向けてはいつも以上に体調管理に努めていらしたのです」(同前)
被災地とのオンライン交流
皇太子ご夫妻時代に、両陛下は宮城、岩手、福島の被災3県を3巡した。発災10年の節目にあたる今年は、本来であれば現地を繰り返し訪れ、令和の皇室の歴史を刻んでいただろう。だが、コロナ禍ではそれもかなわない。
「皇室はオンライン活用の動きが鈍かったのですが、震災に関しては、早い時期からオンラインでの被災3県との交流が持ち上がり、内々に準備が進みました。
両陛下はこれまで訪問した被災地をはじめ、現状について資料を集め、関係者に話を聞くなどして入念に準備されたそうです。被災3県のうち、まずは福島県と2月16日に交流することが決まりました。画面上で相対する自治体の首長や被災者のプロフィールを読み込み、質問もご準備されていた。しかしその矢先、同13日に福島県などで最大震度6強の地震が発生しました。残念ながらオンライン交流は延期になりました。しかし、両陛下は何より、地震の被害を心配されたそうです」(ベテラン宮内庁担当記者)