「知らない」「記憶にない」を連発
ゼネコンの談合担当者は、正式な選挙応援要員ではない。あくまで裏部隊だ。その存在が世間に知れるとまずいから、敢えて立候補者本人が姿を見せなかったのかもしれない。当の太田自身に尋ねても、ゼネコンの応援をしていないものの「知らない」「記憶にない」を連発した。
「鈴木先生に選挙で助けていただいたのは事実ですが、大林の件はまったく知りません。私の知らないところで知らないことがいっぱい繰り広げられていたんでしょうね。御神輿に乗るといいますが、まさにそういう状況でした。ハンナンの浅田さんについても、選挙中、何も分からない状況のなかで動き回っているうちに初めてお会いしたんです」
知事に就任したあとの00年7月にも、太田は副知事や自民党府議たちとともに羽曳野市にある浅田の豪邸に招待されている。敷地内の迎賓館「聊娯亭」で、豪華な料理を振る舞われた。手土産として、100グラム5000円もする最高級の牛肉を受け取ったとされ、のちにそれが議会で追及されている。
ゼネコン、政官界、裏社会の密接なつながり
そのハンナングループには「昭栄興業」という建設会社がある。東急建設の石田とも付き合いがあった。ゼネコンと政官界や裏社会との関係、それは世間で思われている以上に深い。
小沢一郎の政治資金規正法違反事件では、当の小沢本人はむろん、民主党議員や小沢シンパの有識者たちが、業者による裏献金を必死に否定してきた。実情をわかっていないのか。それとも、知らないふりをしているのか。
だが、それは建設業界の認識と、かなりかけ離れている。とりわけ、取材してきた談合の当事者たちは、自分たちが住んできた世界で裏献金が常態化していたかのように話す。
「政治と業界のしがらみ、それにまつわるカネが、談合の最大の問題点だったのは間違いありません」
そう明言する「関西談合のドン」石田は、まさに政・官・業が一体となった現場に、幾度も遭遇してきた。そして大阪大学の校舎建て替えのときの経験を明かす。