裏金の決め方
たとえば注目の胆沢ダム工事におけるその役回りは、鹿島建設東北支店幹部だった。これが石田の話す大阪大学の医学部の移転工事だと、竹中工務店の松永がその任にあたった。政官業のもたれ合い構造は、今も昔もさして変わらない。
そして、ゼネコン業界では、裏献金をそのもたれ合いのなかの潤滑油と見なして使ってきた。業者が工事の受注を望む場合、少なくとも「挨拶料」名目の政治献金が最低限の条件だったという。大阪・錦城クラブの別の元幹部が、裏金の決め方を解説する。
「よく裏金は建築で受注額の1パーセント、土木で3パーセントといわれます。だが、一概にそうとは限らない。工事実績や会社の規模などに応じ、受注できて当たり前なら、純粋な挨拶料程度で済む。300万円から500万円くらいでしょうか。また、普通なら工事を受注できるのだけれど、ひょっとして競合相手から邪魔が入るかもしれない場合もあります。たとえば西松建設がJVの二番手として鹿島建設の傘下に入りたいとする。しかし、東急建設が邪魔するかもしれない。そんな不安があると、政治家に渡す金額は、挨拶程度の数百万円では済まない。通常の謝礼どおりでしょう。仮に総額で200億の工事で、二番手の取り分が2割として40億だとします。その1パーセントの4000万を政治家や首長周辺に持っていくという話になるわけです」
三種類ある表と裏の献金
挨拶料はもちろん、こうした通常の謝礼金は、いわゆる「天の声」のための裏金ではない。天の声を出させないようにする「保険料」に過ぎない。天の声とは、決まりかけている受注業者を差し替えるための手段であり、それを要請するときの裏金だ。
いきおい「天の声」を出してもらおうとすれば、その何倍もの裏金が必要になる。つまり、大雑把にいって、一口に政治献金といっても、そこには「純粋な挨拶料」「保険料」「天の声の代金」という三種類がある。裏か表かは別として、それらはいずれも工事受注の礼金であることに変わりない。