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「貧しい人間は死刑になる可能性が高くなり…」社会が行き着いた“死刑の格差”

『私が見た21の死刑判決』より#40

2021/04/17

source : 文春新書

genre : ニュース, 社会, 読書

note

なぜ黒人の犯罪率が高かったのか

 実際に死刑判決者に黒人が多いのは、絶対的にそれ相当の罪を犯しているからだった。死刑や冤罪を抜きにしても、やっぱり圧倒的に黒人の犯罪率は高い。死刑になるのもやむを得ない黒人が多いという。

 では、なぜ黒人が多いのか──。

 それは、教育を受けられないからだという。教育を受けたくても受けられない。機会に恵まれない。だから安易な発想から犯罪に走る者も多い。

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 教育を受けられないのは、そこに潜在的な差別があったり、あるいは経済的に恵まれない条件があるからだった。教育を受ける機会に恵まれなければ、自由競争社会の中で経済的に裕福にもなっていけない。ますます教育を受ける機会からも遠ざかっていく。

 つまり、アメリカの強烈な格差社会が、そのまま死刑の格差に影響しているというのだ。

 法律によって人を殺すことよりも、もっと残酷な現状を社会システムが作り上げている。ならば、死刑そのものを廃止すべきであるという考えなのだ。

 格差社会に伴う、白人に死刑判決が出難い理由がもうひとつある。

 経済的弱者は、報酬の高い優秀な弁護士を雇えない。優秀であれば、報酬も高くつく。経済的な弱者が黒人に圧倒的に多く、これによって白人が罪を犯したとしても死刑回避の確率も増すという次第だった。それが、格差社会の生んだもうひとつの死刑格差に結び付いているのだ。

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