19歳年上の大崎善生氏と結婚。将棋関係者は「ぎょえー」
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「将棋世界」編集長だった大崎善生さんは、2000年に故・村山聖九段の生涯を描いた『聖の青春』(講談社)で作家としての一歩を踏み出し、2001年にはプロになれなかった奨励会員をテーマにしたノンフィクション『将棋の子』(講談社)と小説『パイロットフィッシュ』(角川書店)を上梓。同年、「将棋世界」編集長の職を辞して専業作家となっている。
初期の女流育成会員だったルーマニア出身のマリアさんの娘の心中事件を追った『ドナウよ、静かに流れよ』(文藝春秋)などで、何度も大宅壮一ノンフィクション賞候補に挙がり、恋愛小説、エッセイでも有名な人気作家だ。
『パイロットフィッシュ』は高橋女流三段がモデルかどうかは定かではないが、19歳年下の美しい女性との恋模様が描かれている。2003年に、大崎善生さんと高橋和女流三段は結婚。26歳の人気女流棋士と45歳の元「将棋世界」編集長の結婚は、将棋界を驚かせた。
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大崎はずっと独身で自由に生きているタイプ。私は20歳を過ぎてから1人暮らしをしていて、両親が心配するため、駅に近い安全なマンションを借りて家賃が高い。2度目の更新手続きの案内が来た頃には、家賃を払い続けるのが嫌になり「もう更新をしたくない」と大崎に言いました。「更新しないということは一緒に暮らす」という感じで、結婚することになりました。
次に私の両親への挨拶です。両親はきちんとした人で、特に父は「娘さんを下さい」なんて挨拶を待っていたと思います。しかし、大崎がそんなまともなことを言うわけはない。お店での私と両親、大崎の昼食会だったのですが、話ははずまず、私が必死になって話題を振っていました。
何の話題だったか忘れてしまいましたが、私が何か言ったことに対して、大崎は「それは違う」と真っ向から反論してきました。私は内心「何で、ここでつっかかるの」と思いましたが、父は、大崎のなあなあにしないところが気に入ったようでした。2003年に結婚を発表すると、将棋関係者の皆さんには「ぎょえー」とそれは驚かれましたよ。
教える仕事は楽しく続けていましたが、対局のほうは「このままでいいのか」とずっと悩んでいました。辞めようかなと思ったものの、今は女流名人戦A級にいるから辞めるのは無責任かなと思いとどまったり。2005年の引退の決断まで時間がかかりました。
さあ、引退して第二の人生の始まり、少し遊ぼうかなと思った引退翌月に私は妊娠して、なんというタイミングだと思いました。流産しかけてしまい「絶対安静」を医師から言い渡され、2~3カ月、自宅のベッドで過ごしました。最初は「7・3でダメでしょう」なんて言われ、今はほとんど家事をしない大崎もそのときだけは、炊事も洗濯もしてくれました。
わが子はお腹の中でしがみついていたのか、流産の危機は乗り越え、生まれてきたのは人一倍元気な男の子でした。
写真=榎本麻美/文藝春秋