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「将棋を教えるには技術が必要」現役を引退した高橋和女流三段が“天職”と向き合うまで

高橋和女流三段インタビュー #2

2021/03/30
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 同時に、ファンの方がプロに対して正当なお金を払うべきと考えるようになってきたとも感じています。今まで、安い値段でタイトルホルダーが指導対局をすることもありましたが、プロスポーツでトップの選手から2000円で指導を受けられるなんてありえない。また、女流棋士は棋士より安い指導料だったりしましたが、そこは求められる市場価格というものがあるとも思います。将棋の森では、満足していただける良いものを提供したうえで、きちんとした価格をお客様からいただいて、指導にいらっしゃる棋士、女流棋士にお支払いをしたいと考えています。

 

 指導対局が良い例ですが、将棋界はファンと棋士の距離が近い。ほとんどの方は節度を持って接して下さっていると思います。いろいろ見ていて、近い分、何かあってからでは遅いとちょっと心配になることもありますね。写真も、許可なくどんどんネットに上げるのが普通になっていて、でも、禁止してしまったら寂しい。中には写りが悪い、本人が見たら嫌なものもあります。自分がされたら嫌だと思うことはしない節度は必要だと思います。将棋の森での講座では、お呼びした棋士と相談の上「トークの時の写真撮影はOKだけれど、指導対局中は遠慮して」など、その都度ルールを決めています。

子ども向けの導入~初心者の指導ができる人を増やす

 将棋人気を長く続けるためには、子どもに将棋を広めるのも大切です。将棋の森では、まったく初めての子どもの指導に力を入れています。全6回の「まなび将棋教室」でルールや駒の動かし方を学んでから「テラコヤ」に編入してもらっています。昔は父や祖父に将棋を教えてもらう機会があったけれど、今は親も知らなくて子どもに教えられない。だから、駒の動かし方から「まるっと教えてもらいたい」という需要が高くなってきたのです。

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以前は木の駒を使っていたが、消毒しやすいようにプラスチックに変更した

 これからさらに将棋を普及するためには、子ども向けの導入~初心者の指導ができる人を増やすことが欠かせません。そこで「まなび将棋公認インストラクター養成講座(日本まなび将棋普及協会主催)」も開いて教え方、子どもに集中してもらう方法を学んでもらっています。将棋をすでに知っている子に教えるよりも、まったく知らない子に教えるほうが難しいので、その技術をお伝えする養成講座です。それは立派な技術なんだと理解してもらえるようにしたい。インストラクターの資格を取った方に、それぞれの地元などで将棋を広めてもらえると良いと考えています。