「人見知りで話しベタで気弱」を自認する新卒女性が入社し、配属されたのは信販会社の督促部署! 誰からも望まれない電話をかけ続ける環境は日本一ストレスフルな職場といっても過言ではなかった。多重債務者や支払困難顧客たちの想像を絶する言動の数々とは一体どんなものだったのだろう。

 現在もコールセンターで働く榎本まみ氏が著した『督促OL 奮闘日記』(文春文庫)から一部を抜粋し、かつての激闘の日々で身につけたお金についての基本的なノウハウを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

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借金を呼ぶモノたち

「先輩! 一生のお願いです! 電話をかけたときにすぐ分かる、延滞しそうなお客さまの見分け方を教えてください‼」

 ある日、私は居酒屋でK藤先輩にテーブルすれすれまで頭を下げていました。

「……なんなの? 急に」

 先輩はうさんくさそうに私を見つめつつ、たばこの煙を吹きかけました。

「このままではマズいのです~‼」

 それは、数日前のこと。

 そのころ私は、ラッキーなことにコールセンターのオペレーターとしては回収金額トップの成績を叩き出していました。

©iStock.com

 それは単純に、督促をしている相手が初期の延滞の人ばかりなので返済してもらいやすかったのと、「質より量で勝負」と、とにかくたくさんの本数の電話をかけていたからだったのです。ところがある日、女子ロッカーでその事件は起きました。

「い、痛ーっ!」

 会社の女子ロッカーは上段と下段に分かれていて、私はしゃがんで下の段のロッカーを使っていました。すると突然、上からずしりと重たい鞄が私めがけて降ってきたのです。

「あいつには負けないわ!」

 直撃した頭を押さえる私。涙目で見上げると一人のスレンダーな女性が腕組みをしながら立っていました。

「えっ、ええっ?」

 落ちてきた鞄と彼女を交互に見ていると、その人は「フンッ」と言って鞄をつかみ、ドスドスとロッカールームを出て行ってしまったのです。そしてその後もなぜか体当たりされる、鞄をぶつけられる、といったロッカーでの彼女からの攻撃は続きました。

 しばらく経った後、その女性は私が配属される前にコールセンターでトップの数字を出していたオペレーターだったことが分かりました。そして彼女が「あいつには負けないわ!」と息巻いていることを風の噂で知ったのです。

「ケンカを売られたのです! なんとしてでも回収成績を上げて、コブの恨みを晴らさねばならないのです!」

 私がビールジョッキをテーブルに叩きつけると、K藤先輩は心底どうでもよさそうに呟きました。

「女の戦いってみにくいなぁ……」

「ヒドイ!」