「人見知りで話しベタで気弱」を自認する新卒女性が入社し、配属されたのは信販会社の督促部署! 誰からも望まれない電話をかけ続ける環境は日本一ストレスフルな職場といっても過言ではなかった。多重債務者や支払困難顧客たちの想像を絶する言動の数々とは一体どんなものだったのだろう。

 現在もコールセンターで働く榎本まみ氏が著した『督促OL 奮闘日記』(文春文庫)から一部を抜粋し、かつての激闘の日々で身につけたお金についての基本的なノウハウを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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意外な借金の理由No.1

「結婚式のご祝儀代で、お金が必要なんです」

 お客さまの口からポロリとこぼれたひと言に、キーボードを叩いていた私の指がぴたりと止まります。

(ま、またかぁ……)

 キャッシングを申し込まれたお客さまには、なんのためにお金を使うのか?ということをお伺いすることがあります。旅行や遊びのためのレジャー費用や、生活費、教育費など、お金を借りる理由は様々ですが、そんな中で特に20代の方がお金を借りる目的としてあげることが多いのが、冠婚葬祭費─つまりご祝儀代なのです。

ご祝儀貧乏には理由がある

「結婚することになりました♡ つきましては○月×日、結婚式をしますので─」

(ひぃぃぃ! こ、今月、3件目‼)

 めでたい、そう確かに、結婚はめでたいのです。

 ただ、寿マークのついた切手が貼られた純白の封筒が届くたびに、確実に3万円ほどがお財布から旅立っていくことは免れないのです。

 20代の社会人の給与の中からご祝儀代、女性の場合は衣装代、ヘアセット代などを差し引くと財布はかなり寂しくなり、私も貯金を切り崩すことがしばしばです。

「すみません、今月入金待ってもらえませんか? 結婚式が続いちゃってお金がないんですよ……」

 電話口から聞こえる、申し訳なさそうなお客さまの声。分かります、その苦しさ。でも結婚式のご祝儀でお金がなくなってしまって、その上カードの延滞の履歴までついてしまうなんて、気の毒すぎます。こちらも胸が痛くなってしまいます。

「借金」という言葉を聞くと、買い物依存症とかギャンブルとか、自分のためにお金を浪費するというイメージがあります。でも、督促の仕事をしていると、借金とは実は人間関係からはじまるものである、とひしひしと感じることがあります。

「娘の学費が急に必要で……」

「両親の入院費としてちょっと……」

 申し訳なさそうにこう言いながら身内のためにお金を借りるお客さま。自分のことだったら我慢できるけど、家族の誰かが目の前で辛い思いをしているのは見るに忍びないから、という気持ちがひしひしと伝わってきます。

©iStock.com

 また身内とまではいかずとも、結婚式や旅行といった人づき合いのためのキャッシングは、とってもメジャーな使用用途です。

 借金をしてまでご祝儀代やレジャー費を捻出するのには、かけつけてお祝いをしたい、友達と旅行に行ってパーッと遊びたい、という理由ももちろんあると思いますが、誘われたらなかなか断りにくいという人間関係上の理由もあるのかもしれません。

 でも督促をしていると、思うことがあるのです、「その人間関係、本当に必要ですか~?」って……。