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サブスク解禁の大瀧詠一 “ラブジェネ”主題歌「幸せな結末」はなぜヒットしたのか?

サブスク解禁の大瀧詠一 “ラブジェネ”主題歌「幸せな結末」はなぜヒットしたのか?

3月21日はアルバム『A LONG VACATION』リリースから40年

2021/03/21
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 もともと大瀧のファンだったさくらは、1991年よりパーソナリティを務めたラジオ番組『オールナイトニッポン』でも彼の往年の楽曲をプッシュした。同番組では、各月ごとに折々の行事などを歌った楽曲を収録して70年代の大瀧作品でも名盤との声が高い『NIAGARA CALENDAR '78』(1977年)から、毎月1曲ずつ流していくという企画も組まれた。

渡辺満里奈『うれしい予感』

さくらももこによる大瀧の再評価

 1992年には細川たかしが「LET'S ONDO AGAIN」をカバーし、NTTが『ちびまる子ちゃん』とコラボレーションしたCMで使われている。また、テレビアニメ『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ系)では1995年から約2年間、大瀧が作曲、さくらが作詞した渡辺満里奈の「うれしい予感」と植木等の「針切じいさんのロケン・ロール」が、それぞれオープニングとエンディングで流された。2曲は両A面シングルとしてCD化されている。このうち「針切じいさんのロケン・ロール」は、アメリカの俳優・歌手のシェブ・ウーリーが1958年にヒットさせた「ロックを踊る宇宙人(The Purple People Eater)」というコミックソングのカバーである。植木によるカバーでは、声優のTARAKO演じるまる子と絶妙な間合いでデュエットしているのが楽しい。

 なお、大瀧の没後、自宅スタジオから、彼がほかのアーティストに提供した曲を自ら歌った音源が発見され、そのなかには『ちびまる子ちゃん』主題歌の2曲も含まれていた。これらはのちに『DEBUT AGAIN』(2016年)というアルバムとして公にされた。

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『ちびまる子ちゃん』から『ラブジェネレーション』へ?

 ともあれ、アニメ『ちびまる子ちゃん』とのコラボレーションにより大瀧サウンドは幅広い層に受け入れられた。おそらくこのことは、1997年に同じくフジテレビの月9ドラマ『ラブジェネレーション』の主題歌に大瀧が書き下ろした「幸せな結末」が使われ、ヒットする布石にもなったのではないだろうか。

月9ドラマ『ラブジェネレーション』の主題歌として大ヒットした「幸せな結末」

 大瀧は『A LONG VACATION』のあと、オリジナルアルバムは1984年に『EACH TIME』を出しただけにとどまった。しかし、音質の向上に並々ならぬ執念を抱いていた彼は、自身のアルバムのリマスタリングに晩年まで力を注ぎ、再リリースを重ねた。

 いまや音楽は、オーディオ機器や専用のプレイヤーだけでなくスマホで聴かれることも多い。今回のサブスク解禁により、自身の楽曲がそうしたツールで聴かれることを、泉下の大瀧はどう思うのだろうか。ちょっと気になるところではある。

※1 大瀧詠一『大瀧詠一 Writing & Talking』(白夜書房、2015年)
※2 『レコード・コレクターズ増刊 大滝詠一 Talks About Niagara』(ミュージック・マガジン、2011年)

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