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 事故当時、ジエウが仮放免後にもかかわらず日本に残っていた一因は、コロナ禍のために帰国の算段がつかなかったためである。ただ、前科1犯の不法滞在者が無保険・無車検状態の車両を無免許で運転して死亡事故を起こし現場から逃走、しかも本人には反省どころか罪の自覚すらほとんどなし──という、まったく救いようのない事件である点は揺るぎそうにない。

ジエウが留置所から恋人のカンに出した手紙(住所は牛久警察署)。ただし、遺族に向けた謝罪の手紙は初公判まで書いていない。

横行する無免許ひき逃げ

 今回、私が『文藝春秋』4月号に寄稿する際に調べてみたところ、2020年に報道されたベトナム人による無免許運転の摘発は、主なものだけで以下がある。容疑者の在留資格については報じられないケースが多いが、多くはボドイ(不法滞在者やコロナ禍による帰国困難者)によるものとみられる。対物・対人事故は太字にした。

【29歳男性】2月18日、滋賀県米原市で無免許運転。道路脇の溝に脱輪していたところを発見。
【30歳男性】3月26日、三重県朝日町で無免許運転、乗用車に衝突して逃走(ひき逃げ)。追突された車両の運転手は首に軽いけが。
【36歳男性】5月30日、岐阜県各務原市で無免許運転、乗用車に追突して逃走(当て逃げ)。同乗の男性2人も不法残留で逮捕。
【33歳男性】6月4日、静岡県浜松市内で無免許運転、一時停止違反。
【24歳男性】6月14日、静岡県焼津市で無免許運転、別の乗用車に追突して逃走(ひき逃げ)。追突された車両の運転手は首に軽いけが。
【28歳男性】7月19日、岐阜県土岐市内で無免許運転。
【31歳男性】7月21日、岐阜県大垣市内で無免許運転。
【22歳男性】7月28日、福井市内で無免許運転、別の乗用車に追突。追突された運転手は首に軽いけが。
【35歳男性】8月24日、名古屋市東区で無免許運転、タクシーと接触事故のうえ、パトカーからの逃走中にさらに接触事故
【26歳男性】9月18日、三重県鈴鹿市内で盗難車のナンバープレートを付けた車両を無免許運転。
【56歳男性】10月22日、静岡県浜松市内で無免許運転、交差点で別の乗用車と衝突のうえ逃走。酒気帯び状態だった。

 従来、無免許運転のボドイによる事故は少なからず起きてきたものの、さいわい死亡者や重傷者はほとんどいなかった。だが、今回のジエウの事件でついに犠牲者が出てしまった。

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39歳女性が自転車で通勤中、背後から追突してきたデミオにひき逃げされ重傷を負った現場。後日になり25歳のベトナム人男性レ・ホン・ファットが逮捕された。写真奥に見えるのは小学校で、隣には中学校もある。2021年2月17日安田撮影。

 加えてジエウ事件の5日後にも、愛知県小牧市内で無免許運転をおこなった25歳のボドイによって39歳女性がひき逃げされ、骨盤骨折の重傷を負う事件が起きている。こちらの事件の発生現場は小学校の校門前で、しかも通学時間だったため、運が悪ければより深刻な惨事が起きていた可能性すらあった。