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「私は気味の悪い化け物と暮らしていた」自殺未遂まで追い詰められた“マルチ商法にハマった母”からの洗脳

『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』より #2

2021/03/28

 結婚相手がマルチ商法にハマって家庭が崩壊してしまった……。そんな自身の経験をインターネット上に発表したズュータン氏。壮絶な体験は多くの注目を集め、同様の経験を持つ人たちとの交流が生まれるようになった。

 ここでは、同氏の著書『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』(ポプラ社)を引用。ズュータン氏のもとに寄せられた悪質マルチ商法被害者の女性の体験談を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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「なんかお母さんヤバい!」

「頻繁に『X社』と連呼するので、『なんかお母さんヤバい!』と恐怖を覚えるようになりました。急に機嫌が良くなったり悪くなったりを繰り返して、その変化についていけなくなりました。X社の話をしているときはすごく楽しそうだけど余裕がないと、私は子どもながらに感じていました」

 蜃気楼さんは強制的にX社の集まりに連れ回され、そこでお母さんがX社のグループリーダーに「マインドコントロール」されている印象を受けていた。お母さんは、40代の女性で夫婦そろってX社に取り組んでいるグループリーダーを崇拝し、家でも「〇〇さんがっ! 〇〇さんがっ!」と壊れたロボットのように口にしていたという。そのグループリーダーに「普通の人は時間と引き換えにお金を手に入れるけど、X社は売りまくれば権利収入でお金が手に入るから、会員増やすのがんばってね!」と言われたり、「明日ハワイ行こう! と思ったときに行ける人生にしましょう!」と言われ、恍惚としていたお母さんの表情を昨日のことのように覚えているという。

(※写真はイメージ)©️iStock.com

「それから母は、手あたりしだいにX社の勧誘をするようになりました。友人知人はもちろん、私の同級生のお母さん、さらには小学校の担任の先生まで勧誘していたんです。母の友達や、母の母(おばあちゃん)が『やめたほうがいいよ』と説得していましたが、母は聞く耳を持ちませんでした。父も何度も母に説得していたんです。そのたびに母はヒステリーを起こして。父は疲れ果て、つらそうにしていました」

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』を見た翌日に両親が離婚

 お父さんとお母さんが離婚したのは蜃気楼さんが小学生5年生のとき、お母さんがX社をはじめてから1年ぐらいした頃だった。

「最後に父と行った映画は『ハリー・ポッターと秘密の部屋』でした。その帰りの車で『お母さんとお父さんどっちか選ばなきゃいけなくなったら、どうする?』と聞かれたんです。私が『お父さんは?』と聞き返すと、父は黙り込みました。そのまま父も私も無言で家に帰りました。その翌日、父と母は離婚しました」

(※写真はイメージ)©️iStock.com

 離婚することで蜃気楼さんは「これでお母さんと離れられる!」と希望を持った。だが、お母さんと離れお父さんと暮らすという蜃気楼さんの希望はかなわず、お母さんのもとに残ることになる。離婚したことでタガが外れてしまったのか、お母さんは、ますますX社にのめり込んでいき、蜃気楼さんにもX社の良さを伝えようと必死になった。「すぐに思い出せるだけでも……」と、お母さんの必死ぶりを物語るエピソードを話してくれた。