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「私は気味の悪い化け物と暮らしていた」自殺未遂まで追い詰められた“マルチ商法にハマった母”からの洗脳

『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』より #2

2021/03/28
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 蜃気楼さんはお母さんから逃げた。旦那さんのサポートを得ながら。そして自分の居場所を作っていった。

「その3年間、地元に帰るときは旦那の家に帰っていました。どうせ実家に帰っても私の居場所なんてありませんでした。部屋がない、布団がない、相変わらず借金に追われ、家のなかは荒れ放題で、ゴミ屋敷と化していました。実家は私が安心できる場所ではなかったんです。旦那の家しか安心できる場所がなかった。旦那の家族は本当にいい人しかいなかった。お父さんも優しい(お父さんがいるのがうらやましい)。おじいちゃんおばあちゃんはいつも『おかえり』と言ってくれる。お母さんはお料理がとっても上手。本当に素敵な家族で、だから旦那もこんなに素敵な人に育ったんだなって。その後、結婚して旦那の実家で1年過ごしました。今は旦那の収入も安定したのでふたり暮らしをしています」

マルチ商法の会員には絶対にできないこと

 今は幸せと言う蜃気楼さんに、どういうところが? と尋ねると、作ったご飯を「おいしい」と喜んでくれたり、洗濯物や掃除に「ありがとう」と言ってくれるということだと言った。

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(※写真はイメージ)©️iStock.com

「旦那と出会い、私は無償で人を思いやり行動するという本当の愛を知ることができました。母と一緒に暮らしていたときには感じることのできなかったことです。母だけではなく、マルチ商法の会員には絶対にできないことです。だからマルチ商法の会員の安っぽい言葉に惑わされないでほしい。『あなたのために』とか。『出会いに感謝』とか。彼らに人を思いやる心、感謝、優しさ、そういうものは一切ない。だから、彼らは人を平気で利用する。人を利用することに罪悪感もないから、残酷なことができる。それが我が子であっても」

「お子さんはいますか?」と聞くと、「まだいません。何年か先には子どもを産んで、母親になっているかもしれない」と言った。そして「母のようになりたくない。自分が小さいときにされて嫌だったことは絶対に子どもにしたくない」と力を込めた。

【前編を読む】「X社の製品がないと身体の調子が悪い…」マルチ商法に洗脳された妻との異常な夫婦生活

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