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「お前の親父はヤクザだろ」高知東生も経験した“ヤクザの子供”に生まれたからこその“苦しみ”

『職業としてのヤクザ』より #1

鈴木 ヤクザと家庭をきちんと分けるのは、姐さんの仕事ですね。

溝口 しかしながら、稲川会会長だった稲川聖城は、自分のせがれ、裕紘をヤクザにし、稲川会の三代目を継がせた。そして、裕紘も、自分の息子をやっぱりヤクザにつけようとしましたが、反対する組幹部が多くてできなかった。このように、ヤクザの教育方針によって、子供をヤクザにするかしないかは決まります。

最強のモンスター・ペアレンツ

鈴木 本来は厳しい生存競争が前提で、命を失う可能性がある危険な世界です。息子をヤクザにしたいと思うはずがない。実際、ヤクザが抗争に明け暮れている当時、雑誌のインタビューでは、子供が望めば自由にさせるが、自分は息子をヤクザにしたくないと断言する親分ばかりでした。そりゃそうだよなと思っていました。ただし近年のように、組織が巨大なシステムになって、抗争ができなくなり、平和共存路線が定着するようになると、親分という椅子に座っているだけで莫大な金が入ってくる。楽して儲かる仕事なら、血縁に禅譲したくなります。だから、稲川会の親分が、息子に稲川会を継がせたころ、山口組の直参でも、息子に組織を継がせるという例が増えました。

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溝口 徳島の心腹会とか、一部いることはいる。

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鈴木 でもたいてい、ヤクザの子供は関西で言うところのアホボンというやつです。なぜならヤクザは子供を甘やかすし、子供もヤクザの暴力を使おうとします。スーパーカーブームの際、ランボルギーニ・カウンタックというイタリアのスポーツ・カーが大人気となり、子供たちがカメラを持ってそういった車を追いかけた。ある親分の子供がカウンタックを欲しいと言い出したところ、父親である親分は実車を買い与えました。ヤクザはただでさえ、オリンピック級のサイコパス揃いです。最強のモンスター・ペアレンツですから、周囲もなかなかものが言えない。ワガママに育つというわけです。

溝口 確かに、世襲のヤクザでうまくいっているケースは、あまり知りません。