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ヤクザの子供だとなれない仕事

溝口 僕がこのまえ会った俳優の高知東生は、高知の中井組・中井啓一(三代目山口組舎弟)という親分の子供です。彼は、中井の子供として少年期を過ごしていますが、自分のお母さんは中井の愛人だったということも知っていた。

 そうすると、過保護の体質で、学校に高級車が乗りつけることもあるし、生活も豊かで、周りの子供たちも中井親分の子供として高知東生を扱い、先生すら遠慮することもあったという。そういう利益の部分もあっただろうけども、高知東生は不利益もこうむっているんです。やはり進学先とかを決めるのが難しかったらしい。実は高知の本当の父親は中井ではなく、徳島の有名ヤクザです。高知は長じて後、それを知ってさらに混乱したそうです。

鈴木 私立中学の受験とかもバレたら、やっぱりまずいでしょう。だから、最近は、ヤクザとして顔がばれたくない、有名になりたくないという若い衆も増えている。雑誌なんかの取材で写真を撮るときに、「顔は写りたくないです」と言う人もいます。それは主に家族や仕事のためで、昔は決してそんなことはなかった。逆に取材が来て雑誌に載るのだから、ヤクザじゃない友人たちも一緒に写真を撮って欲しいと言われた。

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©iStock.com

 就職にしたって、ヤクザの子供は警察官には絶対になれない。警察に聞けばそんなことはないと言うのかもしれませんが。

溝口 警察官でなくても、新聞記者になったって、警視庁記者クラブに詰めることになった場合、警視庁は所属する記者の身元調査をしますので、そうするとお断わりですとなるでしょう。

鈴木 それは実質、差別ですが、現実としてはある。

溝口 だから、ヤクザの子供は男女共通して水商売の人が多いんです。店を経営したりね。水商売はそういう身元調査は一切関係なく、誰でもなれますから。

鈴木 ヤクザの子供というだけで職業が限られるのはおかしな話です。差別以外の何ものでもない。

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職業としてのヤクザ

溝口 敦 ,鈴木 智彦

小学館

2021年4月1日 発売