絶縁、破門が形骸化している
鈴木 ただし今は山口組のおかげで、破門や絶縁が無実化してきています。神戸山口組の幹部たちは六代目山口組から絶縁されていますが、ヤクザをやり続けられている。それによって、よそで破門された人間を別の組織が拾うなど、以前では考えられなかった事態がまかり通っている。
溝口 絶縁、破門がいい加減になっているのは、山口組の分裂のあとからです。その前まではその取り決めはしっかりしていて、例えば、先ほど名前を挙げた中野太郎が、絶縁されたあとに山口組に復縁できるかどうかという大問題がありました。延々と10年近く問題化していましたが、結局最後まで戻ることはなかった。今回の山口組分裂によって、絶縁、破門が形骸化してしまった。
鈴木 六代目山口組の側も、神戸山口組の井上邦雄組長は絶縁したけども、その下の若い衆は絶縁していないという理屈で、神戸をやめて戻りたいならどうぞと傘下組織を取り込もうとしています。
溝口 一番いい例が、最近、神戸山口組を割って出た山健組組長の中田浩司です。彼は六代目山口組組長の司と盃をしてませんから、絶縁されたことにもなっておらず、中田がその気になれば、六代目山口組にも戻れることになる。
鈴木 つまり処分者の若い衆に関しては、好きなように解釈できるわけです。本来なら一切合切拾うなと言ってもいい。破門や絶縁を定義しているのはヤクザです。ヤクザがいいと言うならなんでもありです。実際、かつては、絶縁された人間は決して戻さないという厳しいルールが守られていた。今はどの組織でも平気で復縁します。
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