──そもそもの着想の時点ではあくまでも女性向けの作品だったんですか?
普通の女の人が読む少女マンガはたくさんあるのに、腐女子の人が読みたくなるような少女マンガはないよね、っていうところからスタートしてるんです。
──なるほど! 腐女子にはBLがあるからいいじゃん、ということにはせず、「少女マンガ」を読んでもらいたかったと。
腐女子の人って、男性に対して「かっこいい!」「抱いて欲しい!」と思うよりかは、「このキャラかわいい!」くらいの距離感で見てる人も多いと思うんです。男性と女性のカップルの話でも、男性をそういう目線で愛でる作品があれば、隙間産業的にハマるんじゃないかと思ったんです。
「壁ドン」にもの申す⁉
──あくまでも少女マンガでありながら、でも少女マンガの売れ線のセオリーからは自由であるように感じます。「壁ドン」至上主義にもの申したり。
もの申してはいないのですが(笑)。電子書店のランキングなどを見ていると、女性向けのマンガは、なんだかんだいってイケメンがグイグイ来るようなノリが圧倒的に多いんですよね。昭和・平成・令和を経ても、やっぱりこういった作品がスタンダードなんですよ。私はスタンダードなものも好きなんですけど、じゃあ、その逆をやったらどうなるのかな、と。
──「男らしさ」とか「女らしさ」という概念を、かなり丁寧にトレースしている感じがします。
最近は仕事ができるしお酒もグイグイ飲むし、といった“強い女性”も描かれることが増えましたが、性に関する部分では、やっぱり男性のほうがリードするべき、みたいな風潮は今でもまだあるじゃないですか。それも理解できなくはないんですけど、たとえ男性のほうが性欲は強いということがあるとしても、一方的にリードしなければならない側にさせられてしまって、なんか大変だよね、って思うんです。私が男性だったら、けっこうこれはつらいな、って。
──まさに「男らしさ」に囚われて、セックスでは男がリードしなければならない、「かっこいい彼氏」でいなければならないと思い込んでいる篠宮の心境ですね。
そうですね。女性読者、女性のオタク読者にアプローチしたいっていうところから始まった作品でした。でもやっぱり男性ばかりが攻めたり、リードしたりするのって、けっこう大変だよね、って思ってる男性も、こっそり読んでくれるんじゃないかな、と思い始めて。1巻の第6話は特にそういう気持ちが強く出ましたね。
担当さんが、篠宮は簡単に「受け」にせず、葛藤しているところをもっと出したほうがいいとおっしゃってて、それで篠宮の苦悩を強く出す展開にしたんです。いまは「攻められる」男性の迷いも大事なテーマだなと感じています。