『女と骨盤』(片山洋次郎 著)

「これこれをこうするとこうなる、だからこうしなさい」という本はきっとたくさんある。多分それなりに意味はあるのだろう。

 人間の営みは常に流れていてとどまることはない。年齢、時代、生活環境、心模様。あらゆることの影響を受けながら常に揺れている。

 たいていの教えが何かを希望通りに固定することを説いているとすると、この本は全く違う。

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 むしろ、力を抜きなさい、流れていきなさいと教えてくれている。本全体から漂ってくる、慈悲のような、見守りのような優しい雰囲気。女性を特別視するでもなく、若々しさだけを肯定するでもなく、ただ流れをよく見て泳ぎなさいよ、そうすればいろいろなことが楽だよ、でもそうしたくなければそうしたくない時期もあるかもね、人生っていろんな時期があるからね、好きにしてもまた緩めたら元に戻ったりするし、いろいろやってみたら? でも結局人は、流れの中を自然に泳ぐようにできているんだと思うよ。そういう声が聞こえてくる。

 現代の時間の流れは急で、物事はみんな強烈で、インパクトのないことはあまり重要視されなくて、いつもみんな急いでいて、いつも休みたがっている。

 そんな中で私たち女性が本来ののほほんとした機能をどんどん無くしているのは仕方ないことなのかもしれない。

 でも片山先生はそれに抗うでもなく、それって体にはよくないよね、だからできることをするしかないんじゃない? という風に、全身で今の生を肯定してくれている。この本は時代を含む何者をも、責めていない。こうなっちゃったんだから仕方ない。さあ、人生を豊かにするためにできることをしよう。女性は骨盤とつきあっていくより他ないからね、そう言ってくれる。

 おおらかに描かれたQ&Aを読むだけで、心も骨盤も緩んでいく感じがした。

かたやまようじろう/1950年、川崎市生まれ。東京大学教養学部中退。身がまま整体 気響会を主宰。「野口整体」の思想をベースに、独自の整体法を創り出す。著書に『骨盤にきく』(文春文庫)などがある。

よしもとばなな/1964年、東京都生まれ。小説家。諸作品は海外30カ国以上で翻訳されている。最新作は『吹上奇譚』(幻冬舎)。

女と骨盤

片山 洋次郎(著)

文藝春秋
2017年9月8日 発売

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