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バイトダンスの収益源は何と言っても中国

 新型コロナウイルスの感染拡大で世界中の企業が身を縮めた2020年4月には「1万人の新規採用」を打ち出した。バイトダンスの従業員はすでに6万人を超え、30カ国に180拠点を持つ。まだ成長の真っ最中で、他社が採用を手控える今が人材獲得の好機と見た。

 国内だけで10億人近いネット利用者がいる中国のネット企業は、無理に海外進出しなくても十分に利益が稼げる。このためアリババなどの中国ネット企業は内弁慶だが、張は早い段階から世界市場をターゲットにしていた。会社設立5年目で米国の「ミュージカリー」を買収したことで、全世界で5億人の利用者を獲得した。2019年にはAIを使った作曲技術を持つ英国のベンチャー「ジュークデック」も買収している。

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 世界で億単位のユーザーを獲得したバイトダンスは米国以外でも摩擦の火種になっている。インドでは2019年に「不適切な動画が配信されている」と新規のダウンロードが一時停止された。英国でも個人情報の扱いを巡る政府の調査が始まった。

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 海外の目が厳しいと見ると、張はすかさず「用心棒」を雇い入れる。2020年5月、米ウォルト・ディズニーで動画配信事業を率いるケビン・メイヤーを引き抜き、最高執行責任者(COO)に据えた。メイヤーは2月まで、ボブ・アイガー現会長の後継候補と見られていた大物だ。ディズニーの新CEOが別の人物に内定し、メイヤーが宙ぶらりんになったタイミングを張は見逃さなかった。今後はメイヤーを通じて米政府へのロビー活動を活発化させるだろう。

 2019年9月にアリババのジャック・マーが経営の第一線を退いたと思えば、すぐさま張のような新星が現れる。37歳にして130億ドル(約1兆4000億円)の個人資産を築いた張は、中国経済のダイナミズムを体現する存在だ。

 米国内で使用禁止の大統領令が出ると、張はすかさず、米国事業を売却する方針を打ち出した。バイトダンスの収益源は何と言っても中国で、米国市場はまだ開拓途上。手放してもさほどの打撃はない。すぐにマイクロソフトやツイッターが、買い手として手を挙げた。無理をせず現実と折り合うしなやかさも、バーリンホウの特徴の一つである。