文春オンライン

「ンフッ、痛いですか?」「君、殺すよ」芸歴65年・我修院達也70歳が“かわいくて怖い”怪優になるまで

我修院達也さんインタビュー #3

2021/04/02

source : 文藝春秋 digital

genre : エンタメ, テレビ・ラジオ, 映画, 読書

note

「ンフッ、痛いですか?」「君、殺すよ」かわいくて怖い“殺し屋”

――『鮫肌男と桃尻女』の山田役は衝撃的でしたね。表情、声、衣装と、何から何までがぶっ飛んでいるといいますか。ユーモラスでもあり、おぞましくもあり、笑ってしまうという。

我修院 三國連太郎さんに教わったとおり、役で生きてやるんだと思ってね、低い声で「山田です」とやったら、「ちょっとイメージが違うんですよね。殺し屋だけど、もうちょっとかわいくやってください」って石井監督に言われたんですよ。で、「かわいくていいんですか?」と訊いたら「かわいくやったほうが怖いんですよ」と。それが従来にない殺し屋を生み出すと。なるほど……と思い、いろいろと考えて、あのキャラになったわけ。ブスッと人を刺して「ンフッ、痛いですか?」とか「君、殺すよ」って、やっぱり怖いですよ。あそこまで行くのは、本当に大変だった。

 

――まず眉毛が繋がっていたのが、ファーストインパクトでした。

ADVERTISEMENT

我修院 昔から繋がっていたんですよ。郷ひろみのモノマネをやっていた時は、わざわざ真ん中を剃ってただけ。これは記憶喪失が生んだ眉毛でもあるんですよ。記憶喪失になって入院して剃らずにいたら、繋がっていてね。マネージャーが「これから自分の個性でやっていくと決めたなら、剃らないほうがいいんじゃないの?」って進言してくれて。剃らずに『鮫肌男』の現場に行ったら、石井監督も「うわ、繋がってる! 絶対に剃っちゃダメですよ」と言ってくれて「僕の個性だ。絶対に剃らないぞ」と固く誓ってそのままで出たんですよ。

 石井監督と『スマグラー おまえの未来を運べ』(11)をやった時に、彼から「今回の役では、眉毛の真ん中を剃ってくださいね」と指示されたから「『あれ? 絶対に剃っちゃダメですよ』って言ってなかった?」と訊いたんです。そうしたら、『鮫肌男』の撮影が終わるまでは剃るなという意味だったらしく、13年間も勘違いしたまま繋げてた(笑)。

トレードマークの眉毛は「真っ白なので染めてます」

 

――眉毛は染めているのですか?

我修院 真っ白なので染めてます。毛生え薬は塗ってないですけど。

――山田は眉毛もさることながら、衣装も素晴らしいですよね。

我修院 ほとんどが僕の私服なんですけど、映画の衣装デザイナーの方が用意してくださったものもあります。大きめのジーンズを穿いていましたけど、あれなんかそう。裾を僕は18センチも折って穿いてる(笑)。