「なんで勉強しないといけないの?」

 子どもから、そんな疑問を投げかけられたとき、あなたならなんと答えるだろう。教育や子育ては絶対的な正解があるわけではない。それだけに、答えに窮する人も多いのではないだろうか。そのような子育て、しつけに関する悩みに最適な一冊が『「しつけ」を科学的に分析してわかった小学生の子の学力を「ほめる・叱る」で伸ばすコツ』(実務教育出版)だ。

 著者は熾烈な中学受験において、勉学だけでなく子どもの自律性を育てることも大切にする、中学受験専門塾「伸学会」代表の菊池洋匡氏。ここでは同書を引用し、子どもが自発的に勉強に取り組むために大切な親の心構えを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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子どもの「なんで勉強しないといけないの?」

 お子さんに「なんで勉強しなくちゃいけないの?」と言われたことはありますか? ご自身の子ども時代を思い出すと、自分が親に聞く側だったことがあると思います。私も言ったことがあります。この問いに、どう答えていますか?

 そして、もしあなたが逆にお子さんに「なんで勉強しなくちゃいけないと思う?」と聞き返すとしたら、どう答えてほしいですか?

子どもが勉強すべき二つの理由

 一般的な回答は、大きく二つに分けると次のようになります。

(1)現実主義的回答:「高い学歴を得て、将来得る収入を増やすため」

 いわゆる「学歴社会」が今も続いていると言えるのか、今後も続いていくのか、確実なことは言えませんが、「高い偏差値の中学校・高校→高い偏差値の大学→高い収入の大企業」というイメージは、多くの方が持っているはずです。実際に、これを挙げる小学生は一定数います。すでに現実的な感覚を持っている、ということですね。

 開成中に入ったばかりの中学一年生のとき、知り合って間もない同期の生徒が「公務員になって安定した収入を得るんだ」と言っていて驚いたことがあります(Facebookで確認したら、たしかに省庁勤めになっていました)。おそらく、親に刷り込まれていたのでしょう。「将来の選択肢を増やすために、できるだけ高い偏差値の学校へ進学しよう」も、比較的こちらに近い回答です。

(2)理想主義的回答:「勉強が楽しいから」

 これこそ「理想の回答」だと思います。しかし、これを答える親は意外と少ないです。私は「学びを楽しくする伸学会」として情報発信を続けてきたので、今でこそ保護者向けセミナーでこの答えを提示すると、「そうですよね!」という反応も増えてきました。ですが、以前は「あぁ、そういう答えもあるなぁ」と驚き交じりの感想をいただくことのほうが多かったです。