新型コロナウイルスの流行にともない、真偽の不確かな医学情報が飛び交った結果、トイレットペーパーの買い占めや、納豆がスーパーの棚からなくなるなどのことが起こった。
そして、今も、ワクチンにかかわる真偽不明な情報がネットを中心に飛び交っている。ビル・ゲイツがマイクロチップを埋め込もうとしている、mRNAワクチンによってDNAが書き換えられる、など、枚挙にいとまがない。
どうして人は、真偽の不確かな情報を信じてしまうのだろうか? 特別にだまされやすい人がいるのだろうか? 性格の問題だろうか? それとも、単純に知識がないからだろうか?
わたしは、昨年末、『自身を守り家族を守る医療リテラシー読本』(翔泳社)という書籍を上梓したが、その中で、「特別な人だけが誤情報を信じるわけではない」と書いた。誤情報にはもともと、信じやすくなるような心理的なしかけがある。占いを信じてしまう人の心理とも似ており、いい人、悪い人は関係なく、だれもが誤情報を信じることはあり得る。
では、そういった誤情報と距離をとり、適切に見分け、対処していくにはどうしたらいいのか。特に、命に関わる情報に関しては、適切に判断したいものだが、そういったときにこそ、「医療リテラシー」が重要になる。
「リテラシー」とは、文字通りには「読み書きをする力」という意味だが、「医療リテラシー」とは、「医療情報および医療システムに関して、適切に理解し、活用していく力」とのこと。以下、誤情報を信じやすくなる理由や、見分け方、適切な行動するためのアドバイスを、拙著から抜粋する。
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誤情報を信じてしまう、3つの「仕掛け」
誤情報を信じてしまうのは、どんな人なのでしょうか? 信じてしまうのは、何も特別な人ではありません。状況によっては、誰でも信じてしまうことがあるでしょう。
誤情報の多くには、信じたくなるような仕掛けが施されています。SNSなどで誤情報が増幅されてしまう仕組みもあります。誤情報をうっかり信じてしまったとしても、あなたのせいではありません。
では、誤情報を信じさせてしまう「心理的な仕掛け」にはどんなものがあるのか、いくつかあげてみたいと思います。例えば、占いで誰もがあてはまる言葉をいわれているのに、それが自分に特にあてはまることがらだと思うことがあります。これをバーナム効果といいます。
「占いが当たった」ような気持ちになるのは、この心理効果によるものといわれています。ネットに病気の体験談などが載っていると、自分の症状にあてはまるように思えてしまったりするのも、この効果によるものでしょう。