昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/04/12

最近よく聞く「エビデンス」、本来の意味は

 現代の医学の基礎には、一貫して「エビデンス」の考え方があります。「エビデンス」とは、医学においては「科学的根拠」というような意味で使用されますが、具体的には、研究の結果や症例の報告、多数の研究を集めて分析したものなど、多岐にわたります。論文として発表されているデータといえば、イメージしやすいでしょうか。

エビデンスにはレベルがある

 論文として発表されたさまざまなデータや分析結果はいずれもエビデンスですが、一口にエビデンスといっても、信頼性の高いものから低いものまでさまざまです。信頼性の高さを確認するには、一般的にはエビデンスレベルというものさしを用います。

 一例での報告や少数での研究は、エビデンスレベルは高くありません。動物実験は、エビデンスレベルの最下位にも入らない、まだまだ信頼性が低い研究とみなされます。

 研究には、薬剤投与や食事の変更などの「介入」を行う「介入研究」と、行わない「観察研究」があります。観察研究には、すでに治療を受けた過去の症例を振り返って研究する「後ろ向き研究」よりも、新たに患者さんをエントリーし、追跡して観察する「前向き研究」のほうが、偏りがなくエビデンスレベルは高いとみなされます。一般的に、介入研究のほうが観察研究よりもエビデンスは高いとみなされます。

 介入研究では、無作為に投薬する群と偽薬群を分けて行う「ランダム化比較試験」がもっとも信頼性が高いといわれています。複数のランダム化比較試験など、いくつかの研究を統合して解析する「メタアナリシス」によって証明されると、かなりエビデンスレベルの高いデータということができます。

 必ずしもすべての研究でこのレベル分けが成り立つわけではありませんが、目安として覚えておきましょう。エビデンスについては、第2章でも詳しく説明しています。

 繰り返しになりますが、エビデンスといっても、信頼性の高いものから低いものまでさまざまあります。気を付けたいのが、「エビデンス」という言葉自体が信頼性を担保するものになるとは、必ずしもいえない点です