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一つの研究だけで「エビデンスがある」とは言えない理由
「十分にエビデンスがある」ということがどんな状態なのか、ここで説明しておきましょう。複数の、比較的大規模な研究で再現性のある結果が出ていて、さらにこれらを統合したメタアナリシスで証明されると、「十分にエビデンスがある」といえるでしょう。したがって、一つの研究成果だけで「エビデンスがあった」と考えるのは早計なのです。
第3章で、「信頼性のある情報を得るには、主に公的機関から」とお話ししていますが、公的機関の情報は通常、エビデンスを専門家が吟味したものが掲載してあります。一般の方が信頼性のある情報を得るには、専門家が吟味しまとめた情報を探すのが早道です。ガイドラインなども、そういったものの一つです。
医療には「ゼロリスク」は存在しない
医療は「病気を治す」一方、リスクがつきものです。血管に針を刺して採血をするという多くの人が受けたことのある検査ですら、迷走神経反射(めいそうしんけいはんしゃ)などの有害事象を伴うことがあります。医療に伴うリスクとは、検査による被ばくや薬の副作用など、多岐にわたります。
しかし、リスクを過大におそれてしまうと、医療によるメリットが享受できなくなります。予防接種を忌避(きひ)する人々は、副作用を過大に考えた結果、予防接種による病気予防の効果が得られず、より大きなリスクにさらされてしまうことになります。
※迷走神経反射:自律神経に対する刺激(強い痛みや、排泄、長時間の起立など)により、自律神経の反射が起ること。血圧が下がり、意識を消失することもある。