「尖閣列島を取られたらどうするのか」
伊藤 だって、安倍さんも憲法改正はできなかったじゃない。
――かつては国会でも、社会党の存在が大きかった時代がありました。3分の1ほどの議席を持っていて、共産党もある程度の勢力があった。そうした頃に比べると、やはり左翼も弱くなったような気がどうしても否めないのですが。
伊藤 逆に薄まった左翼がいろんなところに浸透してると考えたほうがいいんじゃないですかね。文藝春秋みたいに。僕は左翼の人たちに聞きたいんだよ。今、これだけ中国に日本が狙われてるのにさ、向こうから撃ってきたらどうするつもりなのかと。尖閣列島を取られたらどうするのかと。
――左翼にも色んな人がいて、中には憲法改正して国を守ることが重要だと主張する、いわゆる左翼ナショナリズムの人もいるとは思いますが。
伊藤 でも、憲法改正の前に起こったらどうします? それは前から言われていることなのにね、何も解決できていないから、僕は非常に苛立ってるんです。
――伊藤さんは、安倍さんのことは評価していますか。
伊藤 僕はずっと安倍さんの支持者だから。前にもちょっと会ったことがあるし。
――安倍さんとお会いになったときは、やはり歴史の話をされるんですか。
伊藤 いや。あれは何だったろうなあ……何かの機会に会って、ちょっと話をしたんです。
――伊藤さんが安倍さんを評価されているのは、教育基本法の改正や安保法制の整備などの点についてですか。
伊藤 うん。でも、それぐらいしかできなかったんだよね。だって国民の支持がなければ、憲法改正も無理でしょ。
ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム
――なるほど。では、憲法改正まで至らなかったのは、安倍さんが悪いというよりは、国民の動向の問題だったと?
伊藤 やっぱり戦後の、アメリカが日本人に対して行った教育、それの最たるものが東京裁判だけど、その影響がずっと続いているわけですよ。
――「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」と言われるものですね。それについては、2018年に賀茂道子さんの『ウォー・ギルト・プログラム』が出ましたね。そこでは、アメリカの大掛かりな工作が一方的に成功したというより、「軍国主義者すべてが悪かった」ということで処理したかった日本側の事情も指摘されています。
伊藤 まぁ、何でもかんでも日本人のせいというさ。9条の問題もそうだけど、そういう形で今は崩そうとしているんだよね。
――同書は、実証的にもしっかりした内容だったと思うのですが……。伊藤さんは、ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムはかなり影響力があったとお考えですか。
伊藤 ものすごくあったと思いますよ。
――それは江藤淳さんの本(『閉された言語空間』)を読まれて?
伊藤 それだけじゃないですけどね。だって現実に彼らがやっていた検閲の内容がわかるわけでしょ。ははあ、こういうことを日本人に言わせたくなかったんだって。