重要人物の日記や書簡などの一次史料発掘や、竹下登・後藤田正晴らをはじめとした「オーラル・ヒストリー」の取り組みで、日本近現代史研究に大きな影響を与えてきた伊藤隆さん(東京大学名誉教授)。現在は国家基本問題研究所(国基研)の理事を務めるなど、保守論客の一人としても知られています。
88歳になった今でも最前線で研究を続ける歴史家は、“愛国教育問題”や、かつての「つくる会」分裂騒動について何を語るのか――。近現代史研究者の辻田真佐憲さんが聞きました。(全2回の2回目/前編から続く)
「朝日新聞は、僕は大嫌いなんですよ」
――伊藤さんは、定期的に読まれている雑誌はありますか。
伊藤 やっぱり『正論』と『WiLL』かな。『Hanada』も時々読むけれど。
――テレビよりは、そうした活字の方が?
伊藤 テレビは楽しみで見てるんですよ。『Youは何しに日本へ?』とか、『ワタシが日本に住む理由』とか。『ポツンと一軒家』なんかね、日本でこういう過疎地帯に住んで、こんな生活をしてる人がいるんだと。それが面白くてね。
――新聞、なかでも朝日についてはどう思われていますか。学生運動のときに朝日の論調に失望して、読売と日経に変えたと本に書かれていますが、その一方で朝日の書評委員もされていましたよね。
伊藤 朝日新聞は、僕は大嫌いなんですよ。だけど、一緒に仕事ができる人とはやりたいんです。だから、たとえば『佐藤栄作日記』は朝日新聞でやったわけでしょ。書評委員もそうです。書評委員のときはちゃんと担当の人に「左翼でなくてもいいんですね」と確認を取って、「自由に書いていいです」と言われて。だからこれは、本当に干渉はなかったですね。本の選び方から、書いた内容まで。
――個々で信頼できる人がいれば、その人とは付き合うということですね。しかし、朝日新聞が嫌いな理由というのは、具体的にはどういったところなのでしょうか。
伊藤 あれは左翼の冊子ですよ。「赤旗」とあんまり変わらない。
――読売や日経は左翼ではないということですか。
伊藤 そうですねえ。中にはいるんですけど。
産経新聞は「よくやってる」
――ちなみに今も読売と日経はご自宅で取られている?
伊藤 いや、今はもう新聞はほとんど読まないから、産経だけ取ってる。産経には「正論」という欄があって、それが面白いから。
――ちなみに産経は「歴史戦」というのをやってますよね。中韓のプロパガンダに対抗するんだと。伊藤さんは、歴史の専門家として「歴史戦」をどうご覧になっていますか。
伊藤 まあ、よくやってるなあと。
――歴史に価値判断が入る危険性はありませんか。戦うための歴史というと、単なる事実やファクトではなくて。
伊藤 いや。本当のことを書けば、戦いになると言ったほうがいいんじゃないですか。