1ページ目から読む
4/6ページ目

伊藤 西部さんは出たわけじゃないと思うんだけどな。僕は西部氏とはずいぶん話し合ったんだよ。藤岡君があまり彼のことを好きじゃなかったから、追い出しかけたのを僕が引き止めて、公民の教科書を作らせたんです。

――一方の小林よしのりさんはどうでしょう?

伊藤 小林さんはね、ずいぶん僕のことを好きになってくれたんだけど、彼がものすごく強い反米になっちゃったんだよね。それでだんだん離れていったのかな。彼を支えていたアシスタントの人が辞めていった影響もあったのかなあ。

ADVERTISEMENT

――そんな「つくる会」の中で、伊藤さんはどんな役割だったんですか。

伊藤 僕はああいう主張の強い人たちの中に挟まって、「まあ、みんな言ってることはそれぞれにもっともだと思うけれども、仲良くやらないと先へ進めないぞ」なんて、なるべく仲裁役を買って出たような記憶がありますね。それほど熱心にやったわけじゃなくて、くだらないことで喧嘩してるなあと思ってましたよ。主義主張って言うんだけど、そんなのはね、少しぐらい折れたってどうってことないよと(笑)。 

森友学園の“愛国教育”について

――ところで「日本人の素晴らしさ」を教えるための歴史教育というと、愛国教育という言い方をされることも多いと思いますが、それについてはどう感じていますか。

伊藤 国を愛するというのは普遍的なものでしょ。どこの国だってそうですよ。だから、それで別に悪いことはないと思ってますけどね。非愛国教育がいいとお考えでしたら別ですけど。

――愛国教育でいうと森友学園の問題もありましたが、それはどうご覧になっていましたか。

伊藤 マスコミが安倍さんを攻撃する手段に使ってるなあというのはよくわかりましたけど。それ以上のものじゃないと思って、あんまりまともに中身も読んでいません。

 

――問題になったのは、幼稚園児に軍歌を歌わせたり、教育勅語を暗唱させたりしていたことですが、そのような教育については?

伊藤 そういう形は別に期待していませんね。だって普通に考えてね、自分の国を愛する、自分の祖先を愛することと、直接関係ないでしょ。

公文書は廃棄してはいけない

――森友学園と、それから加計学園でもそうですが、政府による公文書廃棄も話題になりました。伊藤さんは歴史学者として、資料の重要性はもちろんご存知だと思いますが、そうした問題についてはどのようにご覧になっていましたか。

伊藤 やっぱり公文書は廃棄してはいけないですよ。明治以後、日本で公文書が大量に廃棄されたのは敗戦のときですが、あれで公文書というのは廃棄していいんだという風潮ができちゃったんです。

 でも僕は、自分たちのやっている行為が本当に日本の役に立つんだと考えている人たちは、絶対に公文書を捨てないと思いますよ。だけど今、役人のかなり多くの人たちは、日本は悪い国だというふうに、小中学校、高校で教わってきた連中じゃないですか。しかも戦後、大量に公文書を廃棄したという事例がある。そういうことに影響されていると思いますよ。

――つまり、戦後教育が今回のような公文書廃棄を招いたと?

伊藤 そうです。

――一般的には、安倍政権にとって都合の悪いことを隠蔽するために廃棄したと言われているんですが、そうではなくて、もっと深い戦後教育の問題だという認識ですか。

伊藤 僕はそう思いますね。