文春オンライン

2021/04/17

左翼が全盛の時代だった

伊藤 いや、だから左翼が全盛の時代ですからね。彼らに対して何かを言うためには、彼らが見たこともない資料を実際に発掘して、それに基づいて文章を書くのがいいじゃない。

――そうしますと、最初の話に戻るんですが、弟子の加藤陽子さんも研究はseinでやっていて、よそで政治的発言をされるときにはご自身の思想に基づいて喋っていらっしゃるようにも思います。そういう切り分け方とは違うんですか。

伊藤 違うと思いますね。

――加藤さんの場合は、その両者がつながってしまっている。つまり、初めに結論ありきで学問をやっていると?

伊藤 うん。

――伊藤さんご自身は、もちろん違うというご認識ですよね。では、伊藤さんのように完全に切り分けられる歴史学者が、今はあまりにも少ないということですか。

伊藤 そうですねえ。

アウトサイダーが住める世界も少なくなってきた

――なぜ、そんなことになってしまったんでしょう。

伊藤 今の歴史学界なり、日本社会でね、僕は右翼反動などと言って攻撃されたでしょ。そういうことはしたくないわけですよ、みんな。

――では、伊藤さんのような立場で歴史と向き合おうと思ったら、アカデミズムよりは、むしろ外部にいるほうが良いと?

伊藤 そんなことはないと思いますよ。

 

――大学内でもできる?

伊藤 うん。全くいないわけじゃないんですよ。だから、僕は今、そういう人たちから本をもらったら、延々、御礼状を書いてます。しっかり頑張ってくださいと。だけど、そういう人たちはなかなかいい職が得られませんね。昔のように、アウトサイダーが住める世界も非常に少なくなってきましたし。

――そうすると、これからの若い人にとってはあまり未来がないというか、希望がないということになりませんか。

伊藤 そう思います。だから日本の未来について、僕は今、悲観的に考えているわけですよ。もう尖閣列島は取られるんじゃないかと。

――それでは、これから歴史を志す若い人たちに対する、伊藤さんなりのアドバイスは何かありませんか。

伊藤 それは自分で切り拓いていくよりしょうがないでしょうね。

――それはご自身がやられたように?

伊藤 そういうことです。

撮影=鈴木七絵/文藝春秋

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