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「いじられるのが上手い人しか生き残れない」は昔の話? ケンコバが感じた「第七世代」への“違和感”と“現実”

『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』より #2

2021/04/13
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YouTuberも芸能人も同列

 第七世代芸人の最大の特徴は、物心ついた頃からインターネットが身近にあったデジタルネイティブ世代であり、お笑い以外の文化にも幅広い関心を持っていることだ。

 具体的に言うと、上の世代の芸人と比べて地上波テレビを絶対視するような意識が薄く、YouTuberなどにも偏見を持っていない人が多い。

 実際、霜降り明星のせいやは「第七世代」という言葉を初めて口にした際、芸人だけではなく同世代のYouTuberとも団結していきたいという趣旨のことを語っていた。

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 2017年、私は、のちに第七世代と言われるお笑いトリオの四千頭身を取材したことがあった。

 そのときに新鮮に感じたのは、取材の合間に彼らが雑談で「この前、コンビニに行ったらたまたまYouTuberの◯◯さんを見かけたんだよ!」「えっ、マジかよ! ◯◯さんを生で見られるなんてすごいじゃん」などと語り合っていたことだ。「◯◯さん」というのは、当時30代後半の私が聞いたこともないようなYouTuberの名前だった。

 20代前半の彼らが、人気YouTuberを芸能人のように考えているのは当たり前のことなのかもしれないが、曲がりなりにもプロの芸人である彼らにも、そういう感覚があるということに驚いた。

 今ではプロの芸人も続々とYouTubeに参入するようになり、たとえ上の世代の芸人であっても、YouTuberを頭ごなしに否定的に見るようなことはなくなってきた。

 だが、それはあくまでも、あとから知識として学んだことだろう。

 上の世代の芸人の大半は、YouTuberを芸能人と同列の存在として考えてはいなかった。

 娯楽が少ない時代には、テレビは流行の発信源として若者に不可欠なものだった。だが、今はそうではない。「芸人はテレビを目指すのが当たり前」という常識は彼らには通用しない。芸人の活躍の場はどんどん広がっていて、もはやテレビだけが絶対的な存在ではない。

 第七世代の中には、自身のYouTubeチャンネルで積極的に発信を行っている芸人が多い。単に流行っているから手を出してみたというレベルではなく、自分たちが面白いと思うことを表現するために主体的に取り組んでいることがうかがえる。

仲の良さを見せることに抵抗がない

 そんな第七世代の芸人は、これまでのテレビ界やお笑い界の常識に縛られず、自由な考え方をする人が多い。「芸人ならこう考えるべきだ」「テレビではこういうふうに振る舞うべきだ」といった旧来の考え方を真っ向から否定することもある。

 過去のお笑い界では芸人同士が対抗心をむき出しにして激しく対立していた。若手芸人の間でも「あいつらには負けない」と互いに意識し合うことが当たり前だった。