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「いじられるのが上手い人しか生き残れない」は昔の話? ケンコバが感じた「第七世代」への“違和感”と“現実”

『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』より #2

2021/04/13
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「いじられるのが上手い人しか生き残れない」という定説めいたもの

 具体的に言うと、2010年から2017年ぐらいまでのお笑い界では「若手芸人はいじられるのが上手い人しか生き残れない」という定説めいたものがあった。

 たとえば、この時期にテレビに出るようになったのが、バイきんぐの小峠英二や三四郎の小宮浩信である。

三四郎の小宮浩信氏 ©文藝春秋

 当時の彼らはいじられ役として、ひな壇番組で先輩芸人にあれこれ責め立てられたり、ドッキリ番組でさまざまな罠にはめられたりした。

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 そこで面白さが認められたことで、それ以外の番組にも出られるようになった。この時期には、原則として芸人の縦社会で先輩から「洗礼」を受けなければ、世に出ることができなかったのだ。

第七世代芸人の強み

 だが、第七世代の芸人に対しては、先輩芸人もそこまで厳しくはしない。むしろ、気を使って優しく振る舞うのが普通だ。

 そうなった理由の1つは、世の中の意識の変化だろう。セクハラやパワハラが深刻な社会問題として認識されるようになったことで、たとえ芸人同士の冗談半分のやり取りだとしても、高圧的な振る舞いを嫌悪する視聴者が増えてきた。

 多くの人が職場や家庭や社会でさまざまな抑圧を受けている。それを連想させるような言動は受け入れられにくくなった。

 また、上の世代の芸人としては、第七世代の芸人は歳が離れすぎているため、純粋にかわいく見えるということもあるようだ。

 たとえば、第二世代の明石家さんまや第三世代の松本人志にとって、第四世代から第六世代までの芸人は近い距離にいる後輩である。

 だが、第七世代の芸人は、そのさらに下の世代ということで「孫世代」にあたる。だから、彼らに対して厳しくするという感覚がない。

 一方、第七世代の芸人も、さんまや松本が血気盛んだった若い頃のことを直接は知らない。

 そのため、先輩芸人に対して過度に萎縮せず、フラットに接することができる。この点も第七世代の芸人の強みである。

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