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「いじられるのが上手い人しか生き残れない」は昔の話? ケンコバが感じた「第七世代」への“違和感”と“現実”

『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』より #2

2021/04/13
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 しかし、第七世代の芸人同士は仲が良く、互いに助け合い、励まし合っている。コンビの2人が本当に仲がいいというケースも多い。

  ここで重要なのは、実際に彼らがプライベートで仲良くしているかどうかではない。単に普段は仲がいい人もいるというだけなら、上の世代の芸人もそれほど事情は変わらない。

 この件に関して、上の世代の芸人と第七世代の芸人との最大の違いは「芸人同士が和気あいあいとしている姿を人前で見せるべきではない」という美意識があるかどうか、ということだ。

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ケンドーコバヤシが語る“戸惑い”

 上の世代の芸人は、お笑い界を厳しい競争社会であると捉えていた。そのため、そこでライバル同士であるはずの芸人が仲良く馴れ合っている姿を見せるのは、銃弾飛び交う戦場でふざけているようなもので、戦う者同士としてはあり得ない行動であると考えていた。

 だが、第七世代の芸人にはそういう感覚がない。芸人が仲良くしていてもいいし、それを人前で見せるのにも抵抗がない。

 そして、世間の人もそれを当たり前のように受け入れている。

ケンドーコバヤシ氏 ©文藝春秋

 上の世代の芸人であるケンドーコバヤシは、そんな芸人観の変化に戸惑いを感じている。

「お笑いコンビは仲良くないとダメだとか、芸人はいい人じゃなかったらダメだとか、とにかく絶望的につまらない時代になっているな、とは思います。僕がデビューした頃の芸人って、言葉は悪いですけど『ならず者』みたいなやつしかいなかったですからね。養成所は少年院みたいな雰囲気でした。それが刺激的で面白かったし、そういうやつらに対して自分も『負けへんぞ』と思っていたんです」(Yahoo!ニュース特集「絶望的につまらない時代」――“Mr.やりたい放題”ケンドーコバヤシの流儀)

 一昔前にテレビに出始めた頃のおぎやはぎは「コンビ仲のいい芸人」というキャラクターで注目された。その頃には、コンビは仲が悪いのが当たり前だったので、仲がいいということだけで珍重されていたのだ。

 今では、コンビの仲がいいことは珍しいことでも何でもないので、それがことさらに取り上げられることもなくなった。

「芸人は努力を見せるな」は時代遅れ

  第七世代の芸人は、自分の目標について熱く語ったり、お笑いに真剣に取り組んでいる姿をさらしたりするのも平気だ。そこに一切の照れがない。

 お笑いの世界では昔から「芸人は人前で努力を見せるものではない」という不文律があったのだが、そんな考え方もいまや時代遅れになりつつある。

 お笑いコンテストなどの舞台裏にカメラが入り込み、壁に向かって必死で漫才の練習をする芸人の姿が放送されることも多い。