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鈴木 地元のちょっとおしゃれな飲食店が出店しましたという露店ばかりだと、昔ながらの祭りっぽさが出ないんですよね。だから、祭りを運営する側も排除しきれない。

溝口 最近、焼きそばやたこ焼きとかを「粉物」と言いますよね。一般でも普通に使われる言葉になっていますが、もともとはテキ屋用語だと思いますよ。粉物というのは、ヤクザの専売品で、見てくれの割に原価がものすごく安い。利益率が高くて儲かる。一般の飲食店の焼きそばやたこ焼きは知らないけど、テキ屋がやっている露店の粉物は原価が非常に安い。 

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鈴木 儲からなければやらないですよね。

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みかじめ料はもう取れない

 ヤクザというと、水商売や風俗店などから毎月「みかじめ料」を取るというイメージがありますが、あれももう取れなくなっているんですよね。

溝口 みかじめ料を取ると捕まるから。

鈴木 みかじめ料を取っていたことがバレて警察に挙げられると、その件だけでなく、3年、5年、10年と遡って賠償命令が出る。だから、1万円取るくらいなら、最初からやらない。 

溝口 昔は月払いで、高級クラブだったら月50万円とか、ボロ儲けしていた頃のゲームセンターなら月100万円とか、かなりの額を取っていた。だけど、今はほとんどないし、仮にやっていたとしてもせいぜい月5万円くらい。

鈴木 居酒屋とか寿司屋とか、カタギ商売の飲食店だと、1万円から数万円程度でしたが、それもすっかりなくなった。昔のネオン街では、町内会費の1つだったんだけど、10年くらい前から減り始めた。残っているのはぼったくりの店、ホスト業界、キャバクラなどですね。まっとうな飲食店からは取れてない。

溝口 飲食店側も経営が厳しいから、ヤクザに払えと言われたら警察に訴える。

鈴木 これは暴排条例の影響ですかね?

溝口 それもあるけど、不況のほうが大きいんじゃないかな。店が儲かりにくくなっているし、ヤクザにみかじめ料を払うメリットもなくなっている。店主のほうがヤクザを馬鹿にしているところはある。

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【続きを読む】「“暴力団”はいいけど“反社”とは呼ばれたくない」ヤクザとして生きる男たちの“不思議な本心”とは

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