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鈴木 昔は根室で北方領土近海のカニを密漁するヤクザが“働くヤクザ”と言われて特別視されていたくらいですから。それが今では、地方のヤクザの多くが密漁という肉体労働をしている。

ヤクザが獲った密漁ウナギでも食べたら同じ

溝口 そう言えば、不思議に思っていたのが、20年ぐらい前にグアム島に行ったら、海の底がナマコだらけで……。

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鈴木 今、いませんよね。

溝口 今は知らないけど、昔は足の踏み場もないぐらいナマコだらけだった。あのナマコって食用にならないんですかね?

鈴木 なるんです。今は全然いない。観光客のために駆除したということだけど、中国人が獲っちゃったんじゃないかと疑ってます。

溝口 海を清掃してくれたんだ(笑)。

鈴木 南の国のナマコのほうが獲りやすくて、量も獲れる。価値は低いんだろうけど、中国人が買っていったんでしょうね。

溝口 だけど、ナマコはゼラチン質でしょ?

鈴木 そう。ただのゼラチン質です。味もほとんどない。

溝口 フカヒレもツバメの巣も、ゼラチン質だよね?

鈴木 そうです。他の食材で取った出汁で食べるだけで、それ自体にほとんど味なんかありません。栄養らしきものもない。

溝口 それに大層なお金を投じて食べるってどういう感覚なんだろうね。

鈴木 私もよくわかりませんが、ナマコにしたってアワビにしたって、金になるという観点で見れば、中国市場向けが一番儲かります。だから、今の最前線の密漁というのは、対中国。

©iStock.com

溝口 象牙もそうらしいよね。中国では象牙を扱うのは禁止されているが、日本ではワシントン条約適用前に作られた製品は売買できるので、日本から中国へ流れていく。

鈴木 日本人のそういうルーズさって何なんでしょうね。ウナギの稚魚のシラスウナギは、ヤクザが密漁で獲っていると聞いても、だからといってウナギを食べないということにはならない。土用の丑の日になるとみんなウナギの蒲焼きを食べているわけで。

溝口 暴力団が関与していようがしていまいが、味に変わりはないからね(笑)。消費者の根底にあるのは、密漁品でも食べたら同じという感覚でしょう。

鈴木 だから密漁はなくならない。