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テキ屋と暴力団

溝口 労働するヤクザと言えば、東北だとテキ屋が多いですよね。だから、田舎のヤクザは、高市(テキ屋用語で大きな市や祭礼のこと)で儲けているんだろうなと思っていた。

鈴木 東のヤクザはテキ屋が多いんですよ。西日本はテキ屋とヤクザ・暴力団は別の集団として分かれているんですが、東京から東はほぼ一緒。だから、東北のヤクザは高市がシノギのなかで大きなウェイトを占める。たぶん、収入の半分くらいを占めている。

溝口 東北だけでなく、北海道もですね。

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鈴木 そうです。寅さんみたいなヤクザ、あれが東日本では暴力団だった。

溝口 警察の分類では、暴力団が3種に分かれるとされている。博徒、テキ屋、愚連隊または青少年不良団と。この3種なんですね。それで、関東では同じ組織のなかに博徒とテキ屋が混在している。稲川会でも住吉会でも、一緒くたになっている。

鈴木 今でも祭りとかに出るテキ屋のなかには当然、ヤクザがいる。警察がうるさいから、とりあえずテキ屋と暴力団は組織を分けているけど、実は一緒。取材に行って「写真を撮りたいんですけど」と言うと、「僕らテキ屋ですから」と写ろうとしない。分かれているタテマエになっているけど、溝口さんが言うように同じ組織のなかにいる。

溝口 なかには独立系のテキ屋もいますけどね。テキ屋というよりも街商。街商一本でやってる組もあることにはあるんですよ。ここも苦しいけどね。

鈴木 そうですよね、コンビニができて、何でも買えるし。

溝口 食べていけるのは親分だけという状態。金がないから若い衆は結婚もできない。

鈴木 暴排条例制定後、祭りでテキ屋が露店を出せなくなったとよく言うけど、全国的に出せるところは出せている。弘前の桜祭りでも出ていた。だから、ヤクザとテキ屋の関係性はあまり変わっていないように見える。あんまりツッコまれると警察も困るんじゃないんですかね。警察も困るし、ヤクザも生活できなくなって困る。

 警察はわかってて、「町の活気作りのためにテキ屋が必要だ」という意見に乗って、排除していない。本気で完全に排除するとなったら、見世物小屋も出ないし、たぶん、祭りが大打撃を受ける。だから、ツッコまれると警察が困る。密漁のサカナが市場に堂々と出回っているのと同じで、ある意味、共犯関係にある。

溝口 祭りに関して、町の声で最も大きいのは、「町内会や自治会のおばさんが焼きそばやたこ焼きを作っていると、祭りの雰囲気が出ない。味も違う」という声。テキ屋の怪しげなおっさんやお兄さんが出てくることで、祭りらしい雰囲気になる。