雑木林への遺棄
Kさんの遺体は雑木林に遺棄されていた。遺体には土や枯れ葉がかけられていたが、耳と指の一部が露出していたため、発見に至ったのだという。全裸の状態で首に植物のツルが巻かれていた遺体は、本人と識別できないほどに損傷。死因は顔や頭を殴られて大量失血したことによる失血死だった。また、両腕には無数の内出血があったが、胴体と下半身に外傷がなかった。つまり、首から上だけを殴打されて命を落としたということだ。腕の傷は、おそらく頭部への攻撃を避けた際にできた防御創だろう。まさに酸鼻を極める状態。卑劣としか言いようのない犯行だ。
――遺体発見現場は、思いのほか、すぐに見つかった。献花台があり、たくさんの花が供えられていたからだ。我々が訪れたのが事件発生から、ちょうど7年後の5月だったからだろうか。その花を見て、改めて胸が締めつけられる思いになった。
舞鶴は海沿いの町ではあるが、地形的には面積の大半を山地が占めている。かつて海軍がこの地に拠点を置いたのも、山に囲まれた湖のように波の少ない舞鶴湾が軍港として最適だったからだ。そんな地形の町であるため、発見現場の横を流れる朝来川も、港町の河口付近に流れているような幅の広い川ではなく、山の中を流れる清流だった。
この川には、Kさんの衣服や所持品が、いくつも散乱していた。落ちていたTシャツに血痕はなく、ジーンズは裏返しになっていなかった。
「服に血がついていないということは、全裸の状態で殴打されたものと推測できますが、もちろん自分で服を脱いだはずはない。おそらく、服を着ているときに、まず顔を殴ったのだと考えられます。人は強烈に顔や頭を殴られると、痛さで声を失って抵抗できなくなるものです。そうなったところで服を脱がせ、そのあとに鈍器で殴って殺害……ズボンが裏返しになっていなかったのは、脱がせた後で整えたからだと思います」