ちなみに、N元被告が逮捕された当時、彼の知人や行きつけの飲食店の店員などの証言による彼の素行が、あらゆる週刊誌で報道された。その中には、「キレると見境がなく、何をするか分からない」「仕事場や地元でも口論やトラブルが多かった」という内容のものが複数の雑誌で見受けられた。
また、「無類の女好き」という証言が掲載されている雑誌も多く、「家の中には大量の女性ものの下着やアダルトビデオがあった」という。また、行きつけの店の店員の「店に来るたびに口説かれた」という証言も多数あったが、中には、「若い女の子が好きでしたけど、“糖尿病だし、肝臓が悪くて立たへんのや。役に立たん”と言っていた」というものもあった。
さらに、N元被告は殺人の前科を持つ男だった。この事件の36年前、交際していた女性に結婚を断られると(女性の両親に反対されたとの説もある)、彼は逆上して逃げ帰った実家まで追いかけ、女性とその実兄の2人を刺殺していたのだ。逮捕された彼は懲役16年の刑に服したが、出所後の1991年にも舞鶴市内で21歳の女性に暴行、傷害と強制わいせつの罪で懲役5年の実刑判決を受けている。
防犯カメラに映った男の姿
だが、周囲の評判や前科前歴だけでN元被告が疑われたわけではない。彼の逮捕には、それなりの根拠があった。
それが、防犯カメラの映像だ。自転車を押しながらKさんらしき女性と一緒に歩く男とN元被告が酷似していたのだ。画像が不鮮明なため、はっきりとは分からないが、その容姿や背格好だけでなく、その日の服装が、防犯カメラの男が着用していたのと似た黒いジャンパーだったと、5月6日に彼が訪れたスナックの店員が証言している。そして自転車。定職に就いていなかった彼は、自転車で近所を徘徊するのが日課だったというのだ。
事件直後のN元被告の行動も非常に怪しいものがあった。ニュースで防犯カメラの映像が流れると、彼はその黒いジャンパーは捨てたと周囲に言っていたり、自転車の色を塗り替えたりしたという話もあった。さらには、警察の聴取に対し、事件当日、彼は「何軒かの店で飲んだ」と供述しているが、そのうちの1軒には訪れていなかったことが警察の捜査で判明するなど、食い違いが生じている。