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「僕と一緒にいれば、百パーセント満足できたのに!」黒柳徹子がNY留学中に出会ったプレイボーイたち

『チャックより愛をこめて』より#2

2021/05/03

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, 国際, 芸能

【H】  ホース

 セントラル・パークに、リスやいろんな鳥がたくさんいることは、前にお話ししましたが、このニューヨークには、馬もたくさんいます。それも、おまわりさんを乗せて、パカパカと、自動車と並んで、銀座通りのような賑やかな大通りを歩いているのです。一頭のときもありますし、二、三頭連れだっているときもあります。あっちこっちでよく見かけるのですが、何をしているのでしょう。

「あなたが美しいので見張ってるんですよ」

 そこで、この間、ブロードウェイの通りで、手帳をひろげて何やら書いている馬の上のおまわりさんに質問してみました。

「失礼ですけど、なにか見張ってらっしゃるの?」

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 答え「あなたが美しいので見張ってるんですよ」

「………」

※写真はイメージです。  ©iStock.com

 話はそれますが、こちらは、おまわりさんでもこの調子で、すぐお上手が口から出るのですから、ましてや、プレイボーイだの、世馴れている人の口から、オートメーションの機械のように、ほめ言葉とか、愉快な言葉が出てくるのはあたりまえですし、喋るのが商売のプロの司会者などにいたっては、のべつ人を笑わせて、つきることがない、というのも、驚くことではないのかもしれません。

 あまり、しょっちゅうなので、そのときは笑っても、あまり憶えていませんが、この間も、こういうことがありました。

 中年の男の友だちから、ディナーに誘われたのですが、その夜は芝居を見に行くことに決めてあったので断わり、芝居を見て帰って来たところに、彼から電話があり「芝居どうだった?」そこで「脚本があまり上できとはいえないみたい。とにかく百パーセント満足というわけにはいかなかったわ」すると、すぐさま「だから、今晩、僕と一緒にいれば、百パーセント満足できたのに!」といいました。

 とりたてて、びっくりするほどお上手、というものではないけれど、瞬間的にこういうものが出る、というのは訓練によるものか、国民性によるものか。